経済・政治・国際

2008年9月30日 (火)

金融恐慌に突入

 米国の金融危機は、いよいよ恐慌に転じました。米下院が29日、「金融安定化法案」を否決したからです。これに伴って、この日のニューヨーク株式市場は、777ドルという史上最大の下げ幅を記録しました。また、この日、米大手銀行のワコビアが、銀行部門をシティグループに買収されました。

 米国の金融恐慌の影響で、欧州の金融機関も次々と経営危機に陥っています。日本経済新聞によりますと、英国の住宅金融大手の「ブラッドフォード・アンド・ビングレー(B&B)は、29日、一部国有化されました。国有化されたのは、420億ボンドに及ぶリスクの高い住宅ローン部門などです。残りの210億ポンドの預金と約200の支店は、スペイン最大手の銀行サンタンデールに売却されました。さらに、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクのベネルックス3国は、28日夜、金融大手のフォルティスの一部を国有化しました。投入された公的資金は、総額112億ユーロです。

 日米欧の主要10か国の中央銀行は、29日、市場へのドル資金の供給額を大幅に増やすことを決めました。それによりますと、資金供給額はこれまでの2倍の6200億ドルに増やすとしています。また、資金供給の期間も、これまより3か月延長して、来年4月まで続けるとのことです。その結果、日銀が供給するドル資金は、1200億ドルと倍増することになります。 

 米下院が「金融安定化法案」を否決したのは、与党共和党議員の造反によるものでした。造反議員の多くは11月の選挙で、苦戦が伝えられているとされています。それだけに、国民の間に根強い反ウォール街の感情に従わざるを得ませんでした。海外からは経済合理性よりも、1票のほうを優先したと非難される所以です。

 それにしても、今の米国は金持ち優遇社会です。富豪たちも、こぞってそれを認めています。中でも、金融機関の役員報酬は、法外過ぎます。数十億円というのは当たり前でした。退職金となりますと、100億円を超えていました。今度の金融安定化法案では、議会幹部の要請で、役員報酬に制限を加えることが盛り込まれました。しかし、国民の多くは、それに納得していません。経営責任を追及すべきだとしています。金融安定化法案がどのよう手直しされ、いつ議会で成立するのか、今のところ見通しが全く立っていません。米国の金融恐慌は、先行き不透明の中でさらに深刻化しそうです。###

(註)肩が痛く、再び休止します。

 

2008年9月28日 (日)

米金融危機と対策の遅れ

 9月28日の日経新聞朝刊は、米金融危機をめぐる対策の遅れについて、鋭い警鐘を鳴らしています。記事の執筆者は、編集委員の梶原誠氏です。事実の究明・分析・文面も、全く申し分ありません。この優れた記事が掲載されているのは、1面左側の「金融資本主義の誤算」という企画です。原文のままご紹介いたします。但し、全文ではありません。

 大恐慌も金融の暴走が招いた危機だ。株の信用取引ブームなどマネーの膨張が株価暴落を機に収縮。大量の企業倒産を招いて、4人に1人が職を失い、再生に10年以上を費やした。

 危機を経験した外国の市場関係者は、問題の根深さに気づいていた。「北欧の投資家は、早くから米国の行方に悲観的だった」。17日、東京。世界から集まったシティグループの株式ストラテジストが米金融危機への各国の反応を報告しあった際の証言だ。

 スウェーデン、フィンランド、ノルウェー。3か国は80年代末以降、不動産などのバブル崩壊で次々と金融気に陥った。カネ余りによる資産価格の高騰、銀行管理の甘さ、金融監督の不備ーバブルの要因は米国と同じだ。

 だが、対応は素早かった。スウェーデン政府は危機が表面化した直後に銀行の国有化を断行。不良資産の分離、経営責任の追及、合理化と一気に手を打った。企業の生産は危機の3年後に拡大軌道に乗った。

 対応が遅れたのは日本だ。RCC(整理回収機構)を立ち上げても危機は終わらなかった。損失を出して不良債権をRCCに売る銀行も、経営状態が深刻と見られてしまう銀行も、責任を恐れて積極的に利用しなかった。大胆な政策を先延ばしする間に銀行の資本は傷み続けた。貸し渋りに拍車がかかり、企業の経営は一段と悪化、銀行の不良債権は膨らんだ。金融危機と実体経済の悪循環に陥ったのだ。

 日本の株価が底を打ったのは、RCC発足から4年たった2003年。景気の底割れに直面した政府が、銀行と企業とを同時に再生する「産業再生機構」を立ち上げ、りそなグループへの資本注入にも踏み切った。

 再び現在のワシントン。ヘッジファンドの調査部門は、運用担当者に日本の経緯を説明し、米国株の売却を勧めた。「危機はまだ終わりません」。

 米政府は3月のベアー・スターンズの経営危機以降、個別機関への対応に追われてきた。ようやく包括的な安定化策に動いたが、資本注入は想定していない。日本でいえば、危機の終える4年前の段階に過ぎない。

「このままでは日本の二の舞だ」。リーマン・ブラザーズの破綻後、米国のテレビ討論番組では「失われた10年」の再来を警告する専門家も出始めた。株式市場で続く動揺は、米政府や議会の対応が遅れ、不審が強まった結果といえる。金融資本主義を過信した代償を払って再生に進むのか、誤算の種を増やすのか。今度は米国が歴史を刻む番である。

 米国の財務省は、日本の霞が関と同じで全く無能です。日本の失敗例をみれば、もっと早めに包括的な手を打たなければなりませんでした。今日の危機拡大は、米財務省の無能のせいです。株式の信用取引にしても、金融工学を駆使して開発した各種証券化商品にしても、市場を攪乱する魔性を初めから帯びています。この魔性を利用して利益を最大化しようとする関係者は、当局による規制を極端に嫌います。しかし、彼らの主張を無制限に容認してはなりません。また、行過ぎた金融資本主義の下で、法外な報酬をむさぼってきた金融機関の経営者にしても、一般企業の経営者にしても、このまま放置はできません。一定以上の報酬に対しては、超高率の所得税を課さねばなりません。そうしませんと、所得の格差が拡大し過ぎて、社会全体が不安定になってしまいます。

 米国にしても、日本にしても、「所得税は見直すべきでない」という意見が支配的です。高額所得者に対し高率の所得税を課すと、社会の活力が失われるというのです。また、高額所得者は、税率の低い国に移住してしまうというのです。しかし、これは実証的な理論ではありません。頭の中でこねくり回した推論にすぎません。一部の金持ちが益々大金持ちになる社会は、活力もなく発展もしません。古今東西の歴史が、それを証明しています。やはり、貧富の差が小さく中産階級が多い社会こそが、活力があり治安状態も安定しています。日本と米国は税制の面からも、国のあり方を根本的に見直さなければなりません。行過ぎた金融資本主義も、行過ぎた政府介入主義も、排除しなければなりません。 ###

2008年9月27日 (土)

米金融危機と国民感情

 米政府による「金融安定化法案」が公表されてから、27日で8日目となります。米財務省によりますと、法案の内容は、75兆円にのぼる公的資金で、金融機関の抱える不良債権を買い取るというものです。買い取る対象は、住宅ローンやその関連の証券化商品です。買取期間は2年です。しかし、米議会との折衝が難航し、いまだに法案成立の見通しが立っていません。27日の日経新聞が伝えるところによりますと、政府案に対し、民主・共和両党幹部が注文をつけています。注文の内容は、①公的資金のうち半額の37.5兆円の支出については、議会側が拒否権を有すること、②公的資金の運用を監視する第三者委員会を設置すること、③金融機関の役員報酬を制限することなどとなっています。

 そうした中で、共和党内で新たな案が急浮上しました。共和党の案は、新しい保険制度を創設することによって、不良資産の損失リスクを補てんしようという内容のようです。保険制度の原資には、金融機関が支払う保険料を充て、公的資金を一切使わない枠組みとのことです。

 しかし、「金融安定化法案」をめぐる調整がもたついている間に、全米6位の貯蓄金融機関「ワシントン・ミューチュアル」が25日経営破たんしました。貯蓄金融機関は預金を元手に、住宅ローンを貸し出して利ざやを稼いでいます。ところが、担保となる住宅価格の下落で、貸し倒れ比率が高まっているとされています。 

 金融危機をめぐる米政府の対応について、竹中平蔵氏は21日、「対応が早いし、やるべきことはやっている」と解説していました。これは明らかに間違った解説です。1990年代の日本の金融危機について、米政府は何も学習していません。特に、ポールソン財務長官がそうです。危機の認識が乏しかったうえ、打つ手が常に遅過ぎましたし、小出しすぎました。現在、議会側と調整している金融安定化法案について、もっと早く取り組んでいれば、金融危機の傷口はこんなに広がりませんでした。

 米金融危機について、もう2人おかしな解説をする人物がいました。1人は三井物産戦略研究所の寺島実郎所長です。もう1人は、元財務省財務官の榊原英資氏です。日本の政府系金融機関は10月から大統合されますが、2人とも「日本はそんなことをしている場合でなない。統合によって、中小企業向け融資は一体どうなるのか」と強調していました。小学生でも分かることですが、統合したからと言って中小企業向け融資部門がなくなるわけでありません。この2人については、事実を踏まえないで軽率な発言をするケースが目立ちます。事実を踏まえない言動は、極めて罪深く許してはなりません。

 話がやや横道にそれてしまいました。元に戻します。、「金融安定化法案」は、一刻も早く成立させませんと、金融危機の傷口はさらに広がってしまいます。議会関係者の多くも、そのことはよく分かっています。しかし、一般国民の間には、高額な報酬をむさぼってきたウォール街の関係者に対し、根強い反発があります。「米国社会の仕組みは、ウォール街の人々に有利なように変えられてきた」という怨嗟の声です。こうした怨嗟の声は、金融危機の深刻化によって、ますます広がりを見せています。金融安定化法案の調整は、日本時間の29日未明までに決着するという見方が一般的です。そうでない場合は、世界の金融は恐慌状態となってしまいます。###

2008年9月19日 (金)

「冷や飯組」の覚悟

「冷や飯組み」というのは、今や自民党「上げ潮派」の代名詞です。内閣改造が行われた8月1日以降、人事の面で冷遇されているからです。それに加えて、中心人物の中川秀直氏は先日、所属する町村派の総会で、最高顧問の森喜朗元首相に事実上一喝されました。森氏の意向に反して、自民党総裁選に小池百合子氏の擁立を目指していたからです。その日、中川氏は「これでは冷や飯も食えないな」とボヤいたとのことです。しかし、その日の夕方以降、気を取り直したようです。さらに、9月15日のホームページでは、次のように述べています。「冷や飯が怖いようでは、改革の覚悟があるとはいえない。鍋料理の楽しみは、締めの鍋料理だ。冷や飯を入れてたべる。具材のエキスを吸い込んで、これがうまい。構造改革路線を支持する覚悟を持った人々は、結束しなければならない」。

 日本の差し迫った課題は、何といっても景気後退に歯止めをかけることです。当初、「財源には建設国債を発行して・・・」なんていう意見が、政府部内にありました。しかし、「今すぐ使える霞が関埋蔵金が6兆円もある」という上げ潮派の指摘に対し、「国債発行」という意見はかき消されようとしています。2008年度に使える埋蔵金は、実のところ6,8兆円にのぼります。それにもかかわらず、「建設国債を・・・」というのは、理屈にあいません。埋蔵金というのは、一連の特別会計の剰余金のことです。それを使わずして、あらたに借金をするというのは、全く説得力がありません。建設国債というのは、公共事業や貸付金などにあてる借金のことです。借金という点では、赤字国債と全く同じです。

 日本のもう一つの重要な課題は、借金だらけの財政を再建軌道に乗せることです。そうしませんと、「年金・医療・介護の抜本的な改革」、「所得格差・地域間格差・官民格差の是正」もなかなかできません。この点についても、冷や飯組の「上げ潮派」は実に尤もなことを主張しています。上げ潮派の理論的支柱である高橋洋一氏によりますと、日本政府は約300兆円金融資産を保有しています。これを順次、証券化して時間をかけて売却し、財政赤字を大幅に圧縮すべきだというのです。ちなみに、300兆円の金融資産の内訳は、特殊法人などへの貸付金が250兆円、特殊法人や独立行政法人への出資金が50兆円です。

 上げ潮派が求めているような形で財政を再建軌道に乗せますと、年間22億円も払っている借金の返済がもっと少なくて済むようになります。その結果、財政に弾力性が増し、時代が求める温暖化防止や新しいエネルギー開発にも対応できます。上げ潮派は常々財政再建の道筋として、①デフレ脱却、②政府資産の圧縮、③歳出削減、④制度改革、⑤増税を提唱してきました。しかし、①~④までは同時並行的に実施しなければなりません。

 一方、与謝野馨氏を中心とする財政改革派は、まず消費税の税率アップを提唱しています。そのうえ、上げ潮派の主張は、「幻想に過ぎない」とか「まやかしだ」と非難しています。上げ潮派に対して、与謝野氏がムキになるのは、これまで何度か辛酸をなめさせられてきたからです。その一つが与謝野氏が会長を務めていた、自民党財政改革研究会の中間報告をめぐる確執です。高橋洋一氏の「さらば財務省」によりますと、問題の中間報告は2007年11月21日に明らかにされました。上げ潮派の主張や民主党の政権構想について、中間報告は「埋蔵金伝説の域を出ていない」と厳しく非難していました。そうした中で、27日、中間報告が自民党総務会で論議されました。中間報告は上げ潮派の面々によって、厳しい批判に晒されました。その結果、中間報告は総務会の了承を得られませんでした。代わりに、上げ潮派がまとめた「財政健全化の基本姿勢」が承認され、自民党の政策として正式採用されました。誇り高い与謝野氏を初めとする「財革研」の関係者にとって、これ以上の屈辱はありませんでした。

 22日に投票が行われる自民党総裁選挙は、麻生太郎氏が圧勝する見通しだと、新聞各紙は伝えています。そうなりますと、上げ潮派は引き続き冷や飯を食わねばなりません。しかし、「緊急経済対策に埋蔵金を有効活用すべきだ」という、上げ潮派の主張は採用されそうです。また、高橋洋一氏は、著書の「さらば財務省」が多くの人々に読まれているうえ、各地の講演に引っ張りだこです。上げ潮派の関係者は一時的に閣僚や党役員に起用されなくても、その考え方が急速に広まりつつあることを誇るべきです。

 霞が関の劣化を印象づける不祥事が、また続発しています。一つは食用に使用してはならないはずの汚染米が、給食に出されたりお菓子の原料として大量に使用されていたことです。問題となった汚染米は、輸入が義務づけられている外国産のコメです。残留農薬のほか、カビの生えていることが明らかになりました。これらの米は農林水産省が保管していただけに、責任を免れることはできません。9月19日、農林水産大臣と事務次官が、早々と引責辞任しました。もう一つの不祥事は、年金支給額の改ざんです。枡添要一厚生労働大臣は、社会保険庁の組織ぐるみの不正の疑いが濃いと述べています。そして、徹底的に調査して膿を出す方針を明らかにしています。霞が関は一段と劣化し病んでいます。###

2008年9月17日 (水)

金融危機の拡大

 米国では9月15日、金融危機がさらに拡大しました。ご承知のように、証券4位のリーマン・ブラザーズが63兆7500億円の負債をかかえて倒産したのです。負債金額は史上最大です。また、証券3位のメリルリンチも、銀行に買収されました。買収したのは、米銀行2位のバンク・オブ・アメリカです。いずれもサブプライムローン問題の影響で、不良債権が膨らんだためです。FRB(連邦準備制度理事会)のグリーンスパン前議長はテレビ局のインタービューに対し、「50年ないし100年に1度の事態が起きつつある」と沈痛な表情でした。米政府は7日に、住宅金融公社2社を政府の管理下に置いて、20兆円の公的資金を注入すると発表したばかりです。この1週間で何が起きたかといいますと、経営不安が伝えられたリーマン・ブラザーズとメリルリンチの株式が、ニューヨーク株式市場で売られに売られ続けたのです。その結果、2社の経営は立ち行かなくなってしまいました。

 リーマン・ブラザーズの経営破綻は、日本の金融機関だけでなく、個人投資家に大きな影響を与えます。金融取引が最もグローバル化しているためです。17日の日経新聞朝刊は、日本の大手銀行・地銀・保険会社の場合、リーマン・ブラザーズ向けの投融資は4400億円を超えると伝えています。そして、担保や損失回避のための取り引きで、補えないのは2300億円以上に達するとのことです。

 米国では保険最大手の「AIG]と貯蓄金融機関最大手の「ワシントン・ミューチュアル」も、経営不安が強まっていると伝えられいます。日経新聞によりますと、AIGが日本国内で生命保険事業3つと損害保険事業3つを営んでいます。そして、2007年度の保険料収入は、生命保険と損害保険を合わせてますと2兆1000億円です。それだけに、AIGの経営不安は、日本にとっても頭の痛い問題です。

 この金融危機に対し、米国・欧州・日本の中央銀行は15・16日の2日間だけで、30兆8000億円にのぼる資金を金融市場に供給しました。各金融機関による資金調達を円滑にするためです。現在、先進国の各政府と中央銀行が、緊密に連絡を取り合いながら必死になって金融危機の拡大を食い止めようとしています。極度に劣化したといわれる財務省も、ここは全省を挙げて金融機の拡大に務めなければなりません。その際、何よりも重要なのは、多角的かつきめ細かい情報の収集と情報の的確な分析です。

 米国の官僚や識者の間には、日本でかつて起きた金融危機の際、日本政府は抜本的な対策を打ち出すのに10年以上もかかったと批判する空気が支配的です。しかし、こんどの米国発の金融危機に際しては、日本はいくつかのルートで、もっと早めに思い切った対策を実施するよう提言しました。しかし、米財務長官の対応は、率直に申して常に後手後手でした。日本の財務省や日銀は、断固として米国のこれ以上の後手後手の対策を許してはなりません。###

 この原稿を書き上げたあと、米政府とFRBは日本時間の17日午前10時、AIGの救済策を発表しました。それによりますと、9兆円の融資を行う一方、事実上、政府の管理下に置くとのことです。   

2008年9月15日 (月)

中川秀直氏を叱る

 自民党の中川秀直氏は、たびたびご紹介していますように、政界きっての政策通です。自身のホームページの「トゥデイズアイ」では、ほぼ毎日、新聞各紙の社説やコラムなどを1つだけ取り上げて論評しています。「トゥデイズアイ」の面白いところは、社説やコラムの全文を紹介したうえで論評していることです。こんどの自民党総裁選では、「上げ潮派」の中心人物として小池百合子氏を推しています。以下は、9月15日に中川事務所に送信したFAXの全文です。

914日の「トゥデイズアイ」を拝読いたしました。中川代議士は、政策の提示の手順を間違えています。小池百合子氏もそうです。

  国民が最も知りたいのは、景気の回復と財政再建を同時に実現する具体的道筋です。したがって、上げ潮派として先ず示すべきことは、向こう3~5年間に、「有効活用する霞が関埋蔵金の具体的金額」と、「売却する政府資産の具体的な金額」です。それを示さないで、「構造改革の継続」とか「内閣人事局」・内閣予算局」の実現も叫んでみても、国民の腹に落ちません。

  ①を先ず示したうえで、格差問題や貧困対策に取り組むことを強調すべきです。そのうえで、金融政策の転換や公務員制度改革を中心とした構造改革の中身を語るべきです。いきなり各論では、国民の80パーセントは理解しようとしません。何を言わんとしているのか、頭の悪い奴らだと思われるのが関の山です。

折角、苦労して仕上げた上げ潮派の政策も、説明の手順を間違えたのでは、それこそ「もったいない」限りです。今こそ、知恵を振り絞って、政策の手順と内容をわかりやすく説明すべきです。竹中平蔵氏や高橋洋一氏も時々事務所に顔を出されるでしょうが、何かペーパーを携えながらテレビスタジオを歩き回る小池氏をみますと、非常に頼りなく見えます。総裁候補の人選を間違えていると思わざるを得ません。###

2008年9月13日 (土)

危機の深淵

 米国の金融危機は、不気味な様相を見せています。住宅ローンの元締めの住宅金融公社2社が、遂に政府の管理下におかれたのです。救済策が発表されたのは、日本時間の9月7日の日曜日です。内容は政府の管理下に置くことに加え、合計21兆6000億円という巨額な公的資金を投入することや、経営者の更迭などなっています。2つの住宅金融公社は半官半民の企業体です。そして、米国内の住宅ローンのほとんどについて、債務保証をしています。また、金融機関から住宅ローン債券を買い取ったうえ、証券化して販売しています。これらの事業を営むうえで必要な資金については、公社債を発行して調達してきました。

 しかし、2007年夏に表面化したサブプライムローン問題の影響で、2つの公社の株が暴落しました。さらに、発行する公社債についても買い手が減少し、資金調達が思うようにできなくなっていました。その結果、経営危機に陥り、今年7月に米政府による支援を受けたばかりです。2つの公社が発行する公社債は、米国債に次いで信用力があるとあって、残高が530兆円にのぼっています。それだけに、米国を含む各国の大手金融機関は、2つの公社の公社債などを大量に保有しています。日本の場合、これまでに公表されたものだけで、保有残高は15兆円に達しています。

 日本経済新聞が伝えるところによりますと、6月末から8月25日にかけて、中国の4大銀行の一つである中国銀行が、2つの公社の公社債の保有残高を29%減らしました。その結果、米財務省は危機感を募らせ、大規模な救済策に踏み切ったのです。その後も、日本の大手金融機関に対し個別に電話を入れ、保有している公社債を売却しないよう要請しているもようです。

 世界中の投資家だけでなく、一般国民も新聞を注意深く読んでいれば、米国が金融資本主義にもがき苦しんでいることが分かります。金融資本主義は米国自身が主導し、世界中に広めました。金融工学の発達によって、金融商品の品揃えは数えきらないほどです。中には幾度も証券化を重ねた商品もあります。それらの商品は、すでに中身の一部がブラックボックス化しています。そのうえ、取り引きの形態も複雑になっており、金融当局も実態をつかむのに大わらわです。さらに、2つの住宅金融公社の場合、これまで信用力を背景に住宅金融市場を支配し続けてきました。また、多くの政治家を使って、経営体質の改善を求める声を摘み取ってきました。その結果、改革意欲に乏しい経営体質を生み、政府の管理下におかれる事態になりました。今や、行過ぎた金融資本主義の是正は先進国共通の認識です。先進各国の金融当局は、足並みを揃えて有効な対策を練り上げる義務と責任があります。

 ロシアも予期せぬ経済的混乱に直面しています。8月上旬、隣国のグルジアに軍事侵攻したためです。それ以来、海外資本のロシアからの流出が続いています。ロシアは今年5月、企業に対する政府の関与を強めました。それ以来、株価が値下げに転じました。そうした中で、グルジアへの軍事侵攻は、株価の値下がりに拍車をかけています。また、原油価格も大きく値下がりしていることから、ロシア政府は必要な対策を迫られています。これまでところ、暴落するルーブルを買い支える為替政策しか実施していません。経済のグローバル化の下で、ロシアが直面した初めての苦悩です。欧米諸国から理不尽といわれようと、このまま強気の外交政策を貫くのかどうか眼を離せません。

 12日午前、テレビのBS1で放送した「ブレアの戦争」というドキュメンタリー番組を、NHK総合テレビで見ました。ブレアというのは英国の前首相です。米国のブッシュ大統領と共にイラク戦争を始めた人物です。ブレア首相はイラク戦争の開始までは、正義の政治家・信念の政治家として高く評価されていました。しかし、イラク戦争を始めたのは、正義よりも信念に軸足を置き過ぎたからです。戦争を始める前、ブレア首相は3回ブッシュ大統領と会談しています。そのうち2回は、イラクにおける核兵器、生物兵器、化学兵器の有無について、徹底的に調査するようブッシュ大統領に進言しています。そうした中で、国連の調査団からも、米英の情報機関からも、「大量破壊兵器は無いようだ」という調査結果が上がってきました。

 3回目の会談を迎えて、ブレア首相は大量破壊兵器がテロリストの手に渡れば、善良な市民が殺されるということを改めて強く意識します。米国の9.11事件が、終始、頭から離れていないためでした。ブッシュ大統領からも、「政権を失うようであれば、米国と共同歩調を取らなくてもいいんだ」とまで言われました。しかし、ブレア首相は国連や情報機関の調査結果や、戦争反対の側近たちの進言を無視する形で、戦争突入の決断をしてしまいます。

 ヒットラーやムソリーニの台頭を許した英首相のチェンバレンや、コソボ紛争への介入に及び腰だった米国のクリントン大統領を例に、ブレア首相は「宥和政策は無策ということだ」と強調していました。コソボ紛争ではアルバニア人を中心に、75万人もが虐殺されたといわれています。ブレア首相の粘り強い働きかけで、クリントン大統領はようやく介入の意思を明らかにしました。その途端、セルビアのミロシェビッチ大統領は、コソボからセルビア軍を撤収させました。「正義とはそうした暴虐を絶対許さない確固たる信念だ」と、ブレア首相は繰り返し強調していました。その正義感の強い信念の政治家が、イラク戦争では誤った判断をしてしまいました。そして、今でもあの判断は、間違っていなかったと抗弁するのです。政治家の度し難さに困惑しました。「優れた政治や行政というのは、正義・公正を実現しようという強い信念を背景に、収集した情報を客観的に分析し得る能力のこと」です。我田引水的行為は政治でも行政でもありません。となりますと、今の永田町・霞が関をぶっ壊さない限り、日本のあすは開けません。###

(註)何しろ、肩が痛くて暫く中止します。

2008年9月11日 (木)

「小沢氏の政権交代論」を排す

 日本の戦後政治で最も問題なのは、官僚機構の腐敗と堕落に対し、抜本的なメスを一度も入れようとしなかったことです。元国連大使の波多野敬雄(よしお)氏は何年か前の民放テレビで、「角(田中角栄)さんは、役人の天下り先をたくさんつくってくれた。外務省の役人といえども、おのずずと角さんの応援団になりますよ」と、にこにこしながら話していました。枡添要一厚生労働大臣も参院議員になる前、役人の天下りの是非を問う民放のテレビ番組に出演し強い調子で言いました。「キャリア官僚の大半は高校時代、恋愛も何もかも犠牲にして受験勉強に集中した。そして、東大法学部に入り、民間の大企業より遥かに安い賃金で働き続けている。退職後に天下りして、それなりの報酬を得るのが何で悪い」。

 田中角栄氏が「コンピューター付きブルドーザー」と称された背景には、持ち前の鋭いひらめきと資金力のほかに、霞が関の強力なバックアップがあったからです。福田康夫首相の父親の福田赳夫元首相は、大蔵省主計局長経て政界入りしました。官僚中の官僚出身の人物です。角栄氏とは常に政治的ライバル関係にありました。しかし、官僚集団を味方につけたのは角栄氏側でした。波多野元国連大使の言うように、官僚の面倒見がよかったうえ、カミソリといわれた警察庁長官OBの後藤田正晴氏を懐刀として重用したからです。

 このように官僚を甘やかし続けたツケが、今、国民に重くのしかかっています。私たちが知った官僚機構の腐敗と体たらくは、先進国の中で前例がありません。だからこそ、政権交代を望む声が、民衆の間に広がっているのです。しかし、小沢一郎氏率いる民主党は先の通常国会で、国民や国家の利益を損ない続けました。1か月に及ぶ参院での審議拒否がそうです。またテロ対策特措法の延長法案に対する民主党の反対は、世界を本当に呆れさせました。頼りにならない日本というよりも、独善主義の日本というイメージを与えてしまいました。この失った信頼を回復させるのは容易でありません。

 8日に立候補の受付が行われた民主党の代表選挙も、民主主義と相容れないものでした。新聞報道によりますと、「対立候補が出ると、間近に迫った衆院選で、落選中の仲間が公認されなくなる」とか、「役職に就けず干される」といった恫喝による多数派工作が行われました。その結果、小沢代表の無投票当選が決まりました。

 確か「上げ潮派の素顔」の中でも申したと思います。小沢氏の資金管理団体「陸山会」による土地とマンションの購入問題です。2007年10月9日の毎日新聞の記事をご紹介いたします。

 陸山会の政治資金収支報告書などによると、陸山会は東京都港区のマンション「プライム赤坂」の一室を所有。ここにコンサルタント会社「エスエー・コンサルティング」が入居。同様に千代田区麹町のマンション「グラン・アクス麹町」に所有する一室に外務省、経済産業省などが所管する財団法人「国際草の根交流センター」が入居する。各部屋の登記簿上の所有名義は小沢氏になっている。

 エスエー社は02年1月から、交流センターは04年10月から入居し、それぞれ毎月7万円と20万円の家賃を陸山会に支払っていた。その総額は06年末までに計約1000万円に上る。エスエー社は9月末ごろ転居し、現在は入居していない。

 政治資金規正法では、政治団体による資金の運用について、預貯金、国債や政府保証債券、元本保証のある金融機関への信託以外は認められていない。総務省は「政治資金は国民の浄財。資金で購入した不動産を家賃を取って貸すのは同法が禁止する資産運用にあたる疑いがある」と指摘する。

 小沢氏の資金管理団体「陸山会」が2007年、陸山会は総額約10億円で、都内や盛岡市、仙台市などにマンション、土地などを購入し、登記簿上は、すべて小沢氏名義になっている。今年1月、これらの不動産を事務所費で購入していることが問題になったが、小沢氏は領収書などを公開した上で、「一部は秘書たちの住まいとして活用しており、個人資産ではない」と説明。政界引退または死亡後は「後進の支援」や「日米・日中の草の根交流基金」に陸山会の資産を充てると表明している。

 小沢氏は何故か、多くの政治的同志と袂を分かっています。主な人物は二階俊博氏、野田毅氏、扇千影氏、小池百合子氏、増田寛也氏などです。小沢氏はこれまで気に入らないことがあると、一切の連絡を絶つことがしばしばありました。また、記者団に意に沿わないことを質問をされますと、すぐ喧嘩腰になります。彼はテレビ出演する際、意見の異なる他党の幹部と討論することを嫌います。自ら提案した「国会の党首討論」を、嫌だといって放り投げているのと同じです。「ためしに小沢民主党に政権を!」なんていう有権者は、お人好し過ぎます。今は票欲しさに国民に向かって、猫なで声で甘い言葉を次々とかけています。内容も農家に対する所得保障に象徴されるように、甘い言葉ばかりです。しかし、これは小沢代表の仮の姿に過ぎません。本性は不誠実のうえ強権的かつ独善的で荒々しいのです。政権を渡したあとで、臍(ほぞ)を噛んだのでは遅いのです。小沢氏は民主主義と相容れない「亡国のポリティシャン」です。小沢氏が代表でない民主党が、政権に就くことにはもろ手を挙げて賛成です。###

2008年9月10日 (水)

永田町の田舎政治

 田舎政治とは地域の抱える課題について、何の認識もなければ、その課題を克服しようという意識をもとうとしないことです。やることといえば、ひたすらお茶会や酒宴を開き、世間話に明け暮れることです。どんな町村に行こうとも、現在、このような田舎政治をやっているところはありません。やっているのは、ただ1か所、永田町です。特に、森喜朗元首相に最も強く田舎政治の臭いを感じます。自民党総裁選挙が事実上スタートした中で、8月8日に開かれた最大派閥の町村派の総会について、10日の讀賣新聞朝刊は次のように伝えています。

 町村派代表世話人の中川秀直氏は、「政策集団として対応を強制したら、国民の目線にかなわない」と訴えた。「かなわない」というのは、「合わない」の間違いと思われます。「これを、不快そうに「早くやめなさい」と制したのは、町村派最高顧問の森元首相だった。それでも中川氏は、「小池百合子さんが捨て身で決意した。同志として応援しよういう人がいても理解する。終われば、森さんの言うノーサード(試合が終われば敵味方なし)ということだ」と続けた。これに対し、森氏は約40分間の独演で応じた。「私は麻生太郎君を支持する。彼は幹事長として安倍、福田内閣を支えてくれた。その恩義を返さないといけない。古い自民党の政治家といわれてもいい。人としての恩義を忘れてはいけない」。町村派のベテラン議員は、「森さんの演説で麻生支持の流れが出来るだろう」と語った。派内では安倍首相も麻生支持で動いており、小池氏を担ぐ中川氏は孤立しつつある。

 町村派の総会の翌日の9日、小池元防衛相支持グループが都内のホテルの一室に集まった。その席で、中川氏がぼそりとつぶやいた。「冷や飯もくえないかもしれないな」。しかし、中川氏はその夜のパーティで、自らを奮い立たせるように強調した。「干されるのが嫌なら政治家になるな。こんどの総裁選も、派閥の締め付けなんてやったらおしまいだ」。

 森元首相は内閣が発足して一定の期間が経ちますと、「内閣改造をやるのが望ましい」と必ず言い出す人物です。いわゆる大臣病患者の意見を代弁しているのです。森元首相は、しょっちゅうテレビに出演します。しかし、政策の話は見出しの部分を語るだけです。中身のことはほとんど語りません。おそらく語ることができないのです。田舎政治に没頭しているからです。

 自民党総裁選の実際の構図はこうです。「上げ潮派」vs「財務省を中心とする霞が関」です。上げ潮派は公務員制度の大改革・大幅な地方分権化の推進・巨額な霞が関埋蔵金の有効活用・政府資産の大量売却・金融緩和を通じて、景気の回復と財政再建の両立、小さな政府の実現を図りたいとしています。そうすれば、年金・医療・介護の改革も貧困対策、格差是正対策も、推進可能になると主張しています。一方、霞が関は、上げ潮派の主張にことごとく反対しています。特に、公務員制度の大改革については、OBも動員して反対を続けています。天下りが徐々に出来なくなってしまうからです。霞が関は麻生氏にも、与謝野馨氏に肩入れしています。何としても上げ潮派を潰したいからです。

 麻生氏の政策ブレーンは、リチャード・クー氏です。財政出動派のエコノミストです。不況の現在、思い切った財政出動をしなければダメだと言っている人物です。財政出動というのは、赤字国債を発行して公共事業をなどを増やそうというのです。但し、麻生氏は赤字国債の発行について、名言を避けるようになっています。先進国で赤字国債による財政出動しても、極めて一時的な効果しかありません。財政赤字が増えるだけです。先進国の場合、社会資本が一応整っているだけに、経済手的波及効果が少ないからです。もしも、新たな財政出動をせずに景気を回復させるとなりますと、上げ潮派が指摘している霞が関埋蔵金を使うしかありません。

 日本がおかれている経済的状況は未曾有の危機です。再三申しているように、世界規模の異常な資源・穀物高、米国発の金融市場の大混乱と世界同時不況の荒波に見舞われているからです。そうした中で、ひたすら田舎政治に没頭している人物が、永田町の主導権を握ろうとしているのを、世界は見逃すはずがありません。危機に臨んでも「政策よりも義理と人情を重視」、こんな馬鹿げたことがまかり通っているのです。日本の中央政治は、劣化というよりもクレイジーです。###

2008年9月 8日 (月)

危機感の乏しさ

「財政が大赤字だからといって、原油高などに苦しむ国民の生活をほったらかしにしていいわけがありません。財政よりも国民の生活のほうが、はるかに大事なんです」と力説するのは、こんどの自民党総裁選挙で本命視されている麻生太郎幹事長です。2001年に小泉純一郎政権が誕生するまで、日本はこうしたことを繰り返してきました。その結果、財政赤字は何と860兆円にも膨らんでいます。

 9月8日、小沢一郎氏が無投票で、民主党の代表に選ばれました。そして、記者会見しました。その中で、小沢代表は政権交代の必要性を強調したあと、民主党の政策をめぐる財源について次のように述べました。「政府予算には、一般会計にしろ、特別会計にしろ無駄なものが多々ある。そうしたものを使えば、消費税を値上げしなくても民主党が国民に約束した政策を十分実行できる」。

「霞が関埋蔵金」という表現こそしなかったものの、財源のメドについては自信満々の様子でした。埋蔵金の一つ一つについて、民主党は組織的に十分精査したに違いありません。国の予算をめぐる高橋洋一氏の地道な分析を、民主党は完全に咀嚼マスターしている感じです。一方、自民党の年配議員は財務省に洗脳され、埋蔵金を使うことに躊躇しています。やれ赤字国債の発行だとか、消費税の大幅アップだとか、呑気なことを言っています。財務省の決まり文句は、「埋蔵金は1回使ったらもうおしまい。恒久財源にはなり得ない」というのです。

 そんなことはありません。財務省の言う通りのものもあれば、そうでないものもあります。問題の本質はそんなことではありません。埋蔵金が実に巨額だということです。景気の回復や貧困対策などに、継続的に使えるということです。小沢代表は、「いま現在、無駄な予算は数十兆円」あると指摘していました。

 霞が関が目指しているのは、「天下り制度」の温存です。誠に情けない限りです。成立した「公務員制度改革基本法」を具体化するための関連法案が、来年の通常国会に提出される段取りとなっています。その骨抜き作業に、霞が関は懸命なのです。財政の赤字がどうなろうと、関係がないのです。先進国の中で、こんなに無気力で税金の無駄遣いに鈍感な政府機関はありません。

 前回も申しましたが、日本では借金まみれの財政が、あらゆることの足かせとなっています。財政の再建と不況の克服を同時並行的にやらねばなりません。それには、①埋蔵金の有効活用、②歳出カットの徹底、③公務員制度・地方分権改革の断行、④膨大な政府資産の売却が必要です。それらを実行したうえで、財源が足りなければ⑤消費税率のアップということになります。これは上げ潮派のシナリオです。おそらく民主党が政権奪取に成功したら、上げ潮派のシナリオを参考にするに違いありません。

 自民党若手議員の棚橋泰文氏は、赤字国債の発行に猛烈に反対しています。「これ以上赤字を増やしたら破産状態になる」と怒りまくっています。もの凄い迫力です。まさに正鵠を射ています。自民党の年配議員の危機感の乏しさが、日本転落の引き金を引くような気がしてなりません。###

 

2008年9月 4日 (木)

自民党総裁選

 自民党総裁選挙は9月22日の告示に向けて、候補者が出揃いつつあります。これまでのところ出馬が確実なのは、麻生太郎氏と与謝野馨氏の2人です。また石原伸晃氏と小池百合子氏の2人も、立候補に必要な20人の推薦集めに懸命です。こんどの自民党総裁選は、海外からも非常な注目を集めています。それは過去2回、自民党が総裁の人選を間違えたからです。安倍晋三氏にしても、福田康夫氏にしても、与党第1党の総裁として政権を担うにはひ弱過ぎました。世界は新総裁の首相としての資質と、経済政策に注目しています。

 日本も欧米諸国も、不況下の物価高(スタグフレーション)が深刻化しつつあります。それだけに自民党総裁選の各候補は、経済政策を重点に戦わざるをえません。新聞各紙も、経済戦政策が対立軸になると分析しています。

 麻生氏は不況からの脱出を目指して、財政出動による景気対策を提唱しています。当面最優先すべきは、国民の暮らしだという考えです。与謝野氏は財政の赤字をこれ以上増やすことには反対という立場です。そして、歳入歳出の一体改革によって、安定した経済財政運営をはかりたいという考えです。石原氏は「私のウイングは麻生氏とは逆にある」と述べて、構造改革の継続などによる景気対策を打ち出す構えです。小池氏は上げ潮派です。構造改革の継続による小さな政府の実現、徹底した無駄遣いの排除、政府資産売却などを通じて、経済成長と財政再建を両立させたい考えです。経済戦略をめぐる路線論争の深まりが期待できそうです。こうしたことは、自民党の総裁選挙では初めてです。有権者も各候補の論戦を通じて、おのずと経済政策の知識が深まるはずです。

 話は突如変わります。3日夜、民放の報道ステーションを見ました。コメンテーターとして、三井物産戦略研究所の寺島実郎所長が話していました。「小泉政権以来、日本は米国に追従するばかりであった。しかし、ドイツはこの間、アメリカとの間の地位協定の見直しを行う一方、必要な一連の改革を次々と行った」。

 一見もっともらしい解説です。しかし、ドイツの場合、アメリカとの地位協定は、初めからドイツの国内法を適用するということになっています。そして、5年ごとに見直すことが定められています。一方、日本の場合、当初から日本の国内法を適用しないことになっているのです。すなわち、ドイツの場合、初めから対等の協定であるのに対し、日本の場合、初めから不平等な協定なのです。そのことを説明しないで、「ドイツは協定の見直しをしたのに、日本は協定を見直しをしていない」と解説するのは事実と異なります。寺島氏は日米関係の問題になりますと、日本政府の弱腰を憂慮する余り、過去にも似たようなミスをしています。日米地位協定については、1日も早くドイツと同じように対等な協定にすべきことは言うまでもありません。しかし、繰り返し申します。民主主義には、事実の究明とそれに基づく公正な報道が絶対欠かせません。ゆがんだ報道や一方に偏した報道を、許してはなりません。###

2008年9月 2日 (火)

福田首相の退陣

 福田康夫首相が9月1日夜に行った突然の退陣表明には、一瞬、びっくりいたしました。大阪府の橋下徹知事は、「行政改革は着実に進んでいたのに・・・」と、退陣表明を惜しんでいました。しかし、就任当初から官僚に全面依存の政権運営だっただけに、個人的には1日も早い退陣を願っていました。 

 福田首相が1日夜の緊急記者会見で 実績の一つに道路特定財源の一般財源化を挙げたのには驚きました。福田首相の言い方は、フェアでありません。道路特定財源の無駄遣いの数々を指摘したのは民主党でした。その結果、自民党の道路族の面々も、一般財源化に反対できなくなってしまいました。一般財源化実現の功績は、民主党90%、福田首相10%でした。それが一般財源化実現の真相であり事実です。しかし、自民党道路族と国土交通省は2009年度も、これまで通りの道路予算枠を確保しようと懸命です。

 9月1日にも申し上げましたが、民主主義は事実の究明と、それに基づく公正な報道がなければ成立ちません。ゆがんだ報道、無責任な政治家や評論家の意見を鵜呑みにするのは、有権者として自己否定です。9月2日朝の民放テレビの番組で、自民党の河野太郎氏が これから行われる自民党総裁選挙について次のような主旨の話していました。「先ず、名前(候補者)ありきというのはいけない。どの総裁選候補が、どのような政策を取り揃えて訴えるか。それを見極めたうえで投票する候補者を決めるべきだ。まず政策、そのあとに名前(候補者)ということだ」。政治家であれ、有権者であれ、この精神を失ってはなりません。

 支持率がさっぱり上がらない福田政権に対し、公明党は距離をおき始めたと伝えられていました。その具体的内容は、①2009年夏の東京都議選で公明党の勝利を確実にするため、衆院の解散総選挙をできるだけ早く行うこと、②海上自衛隊によるインド洋での給油活動継続法案について、衆院での再議決はしないこと、③いわゆる定額減税を早期に実施することの3つです。

 ①は福田首相による衆院の解散総選挙に、反対であることも意味しています。これには、自民党衆院議員のほとんどが賛成です。自民党が大敗を喫することが明らかだからです。しかし、②と③は日本の国際協調路線や借金漬けの財政を犠牲にしてでも、公明党の組織を守り抜きたいという意思表示です。政権与党としての鼎の軽重が問われます。10年近く前の「地域振興券」のときも、各方面から問題視されました。

 福田首相でなくとも、衆院の解散総選挙の日程が近づくにつれ、政権運営が行き詰まることは誰の目にも分かっていました。公明党の離反に呼応するかのように、自民党内からも退陣要求のマグマが噴出しかかっていました。そうした中での退陣表明だけに、福田首相にとっては先手を打った政治的決断でした。しかし、安倍晋三前首相に続いて、こうも軽々と政権を放り投げられますと、永田町の劣化はどうしようもないところまで来ていると思わざるを得ません。###

2008年9月 1日 (月)

日本の落日と再浮上

 霞ヶ関の劣化は、まだまだ続いています。2009年度予算の概算要求で、国土交通省は2008年度より15%多い道路予算を要求しました。道路特定財源の一般財源化によって、道路関係予算が大幅に削減されることを恐れたからです。借金漬けの財政を無視した、極めて筋の悪い浅知恵です。公務員制度改革も、これから法案化する「天下りの禁止」などについて、各省庁が骨抜きにしようと悪知恵の限りを尽くしています。

 問題なのは霞ヶ関だけなく、国会も同じです。霞ヶ関による税金の巨額な無駄遣いは、窃盗であり横領です。しかし、国会は本来の使命を放棄して、霞ヶ関の犯罪的行為をずっと見過ごしてきました。いや、かなりの数の国会議員が、霞ヶ関と組んで不心得な政治活動を続けてきました。欧米の主要国の中で、統治機構がこんなに退廃し腐りきった国はありません。何だかんだいわれるイタリアも、日本よりは遥かにましです。

 マスメディアも問題です。1970年代後半から~1990年代初頭にかけて、大手新聞各社とNHKの記者部門は、「きつい、汚い、危険」のいわゆる「3K職場」として若者から嫌われました。その結果、以前に比べて優秀な人材を多数確保できなくなりました。そうした中で、唯一の例外は、日本経済新聞社です。他社に比べて待遇がよかったからです。その結果、日経を除く各社は情報源に食い込む取材力、情報の分析力、記事を書く筆力が著しく減退しました。霞ヶ関の暴走、政治の怠慢を許したのは、大手新聞社とNHKにも大きな責任があります。大手新聞社とNHKは政治ニュースと政治解説の分野で、今も日経新聞に大きく水をあけられたままです。

 霞が関、国会、マスメディアが本来の使命を果たさないとあっては、日本が再浮上するはずがありません。最近、特に陰鬱になったのは、民主党の代表選挙をめぐる動きです。小沢一郎代表に対抗して立候補すると、「人事などで干される」、「落選中の仲間が公認されなくなる」などを理由に、立候補潰しが行われたと新聞各紙が伝えました。民主主義とは程遠い政党の姿です。そのうえ、政策らしい政策をほとんど用意せず、小沢代表は「自公政権では国民の生活は絶対よくならい」と訴えるばかりです。自ら提唱した「党首討論」もほったらかしです。これほど無責任極まりない政治家・政党代表を見たことがありません。「亡国のポリティシャン」そのものです。

 日本は米国発の世界同時不況に巻き込まれ、日に日に景気後退が深刻化しています。そのうえ、原油・鉱物資源・穀物などの世界的高騰で、不況下の物価高に見舞われつつあります。スタグフレーションという経済の悪魔です。さらに、富める者と貧しき者の格差拡大と、巨額な財政赤字にも苦しんでいましす。小沢代表や民主党には、この難局を乗り切る能力は全くありません。厳然たる事実です。誹謗中傷ではありません。

 この難局を乗り切るメニューは、これまでのところ政府も、どの政党も、国民の前に提示していません。政府が先日まとめた総合経済対策では不十分です。今こそ、小泉・竹中改革によって生じた「改革の配当含む霞ヶ関埋蔵金」を、徹底的に有効活用すべきです。しかし、朝日新聞は8月31日の社説で、特別会計にある積立金、いわゆる「埋蔵金」の流用は禁じ手にすべきだと主張しました。危機存亡のときに、こんな主張は説得力がありません。これが今の朝日新聞の論説陣の水準です。

 福田内閣であろうと何内閣であろうと、元内閣参事官の高橋洋一氏に経済財政運営の全てを任せるべきです。高橋氏や自民党の中川秀直氏らは、この難局を乗り切る政策の90%を取り揃えています。無能な官僚や政治家が、彼ら「上げ潮派」を嫉妬し白眼視するひと時は終わりました。「上げ潮派」を内閣や党の要職に就けませんと、日本は崩壊してしまいます。経済財政担当大臣の与謝野馨氏の著書「堂々たる政治」と、上げ潮派の一連の著書を読み比べてみますと一目瞭然です。

 8月28日の日経新聞夕刊によりますと、イギリスの資源会社が2007年、日本の排他的経済水域に鉱区設定の申請をしました。日本近海に多いといわれる海底の鉱物資源の採掘が狙いです。日本の企業グループも、イギリス企業の後を追う形で、海底の鉱物資源の調査・採掘の動きを加速させています。鉱物資源の高騰で、海底からの採掘も採算がとれる可能性が出てきたからです。それにしても、イギリスの資源会社の俊敏な動きには驚きました。

 全般的に日本の産業界は、新しい情報に対して敏感です。それに比べて、日本の政界や官界は非常に鈍感です。そのうえ、小田原評定が大好きです。難しいこことはすべて先送りです。しかし、これにかかる税金もバカになりません。政治と行政にはスピードも必要です。それに加えて、情報開示や公正さが求められます。マスメディアにも公正な報道を行う義務があります。それには、事実の究明が不可欠です。民主主義はマスメディアによる事実の究明と、公正な報道がなければ成り立ちません。###

2008年8月28日 (木)

日本・ロシア・中国・北朝鮮

 ここでいう日本というのは、1905~1945年までの日本のことです。1905年は前年から始めた日露戦争にやっと勝利して、世界中の喝采を浴びた年です。ロシアの南下政策は、世界にとって脅威でした。ロシアと国境を接している国々だけでなく、イギリス、アメリカ、フランス、ドイツといった列強にとってもそうでした。日本の勝利をひときわ喜んだのはトルコです。ロシアの脅威にずっとさらされ続けていたからです。今もトルコが親日的なのは、日本がロシアに勝利したせいです。

 しかし、その後の日本は、すっかり増長してしまいます。1917年、ロシアに共産主義革命が起きますと、翌年シベリアに出兵しました。シベリア出兵には、アメリカ、イギリス、フランスも加わりました。それら3か国の兵力は、合わせて1万3000人足らずでした。しかし、日本だけは増派に増派を重ね、7万2000人も派兵しました。アメリカなど3か国は1920年に撤兵しました。しかし、日本軍はその後も、駐留を続けました。内外の強い批判が強まる中、1925年にようやく撤兵しました。1931年の満州事変以降、日本は国際世論を無視して、中国や東南アジア各地に侵攻します。そして、アメリカの猛反撃に遭い、1945年に無条件降伏してしまいます。

 ロシア、中国、北朝鮮は、戦前の日本に極めて似ています。国際世論になかなか耳を傾けようとしません。非常に独善的です。国際平和の実現や維持に、責任を負うとしません。

 ロシアのグルジア侵攻は、許しがたい侵略です。いわゆる冷戦下では、ソ連軍はチェコ・ハンガリー・アフガニスタンに侵攻しました。しかし、1991年のソ連邦崩壊後、ヨーロッパの国々は、新生ロシアがそのような暴挙に打って出ると思っていませんでした。 

 中国の毒入り餃子事件をめぐる対応も、世界のひんしゅくを買いました。科学的根拠を欠き、責任を日本になすりつけようとしました。中国の少数民族や農民に対する弾圧も、国際世論と相容れません。動乱の時代が長く続いた中国では、今もって法律による統治が徹底していません。その背景として、汚職が権力機構のありとあらゆるところに浸透しているからだと、指摘する専門家が少なくありません。

 一連の拉致事件や1987年の大韓航空機爆破事件に象徴されるように、北朝鮮はテロ国家そのもです。核問題をめぐる6か国協議や米朝協議では、これまでのところ約束ごとを守るとは到底思えませんせん。北朝鮮の体制は、金正日による徹底した軍事優先の独裁国家です。こうした国に核を放棄させるのは至難のわざです。

 米国も国際世論に反して、イラクに侵攻したりベトナムを侵略しました。しかし、ロシア、中国、北朝鮮と異なり、民主主義国家です。言論の自由もあれば政権交代もあります。ロシアなど3国と同一に論ずるべきでありません。

 ロシアによるグルジア侵攻の解決の矢面にたっているのは、今のところヨーロッパ諸国とアメリカです。ヨーロッパ諸国はエネルギーのかなりの部分を、ロシアに依存しています。それだけに、ロシアは強気です。国連安保理でも、グルジア問題の協議を続けています。これまでのところ安保理で、ロシアとアメリカなど3国が互いに拒否権の行使合戦をすることだけは控えています。しかし、解決の糸口は、まだ見えていません。

 ソ連邦崩壊後、欧米はやり過ぎたとみる国際政治学者もいます。やり過ぎというのは、EUとNATOの拡大に加え、ポーランドにミサイル防衛基地を建設しようとしているからです。しかし、いわゆるバルト3国と東欧諸国にとって、EUとNATOへの加盟は死活問題でした。「ソ連邦時代の圧制はこりごりだ」という国内世論が、バルト3国や東欧をEUやNATOへの加盟に走らせたのです。ロシアが次に狙っているのはウクライナです。ウクライナの現政権も、EUとNATOへの加盟を強く希望しています。###

2008年8月27日 (水)

第2次「霞が関埋蔵金」論争

 霞が関の埋蔵金論争は、新しい段階を迎えました。これまでの「有る」、「無い」の論争から、「実際、どれくらいの金額がある」かに移っているからです。「霞ヶ関に巨額な埋蔵金がある」と最初に指摘したのは、元内閣参事官の高橋洋一氏です。高橋氏によりますと、2006年度には20兆円の埋蔵金を掘り出しました。そして、小泉純一郎首相の指示で、全額を国の借金である国債の償還にあてました。2007年度には9.8兆円埋蔵金を探し当てました。しかし、財務省は3兆円しか国債の償還にあてていません。残り6.8兆円については、日銀と財務省が保有していた国債を買い入れたに過ぎません。

 いずれにしても、これまでに23兆円の埋蔵金が国債の償還にあてられています。それだけに、与謝野馨経済財政担当大臣が、「埋蔵金なんて有るはずがない。幻想だ」といくら力んでみたところで始まりません。財政の専門家と称される自民党の有力議員たちも、当初、与謝野大臣と足並みを揃えていました。しかし、今では事実上埋蔵金の存在を認めています。また、財務省も埋蔵金の存在をしぶしぶ認めています。

「上げ潮派」の代表である自民党の中川秀直代議士や高橋氏が、まだ有ると指摘している40~50兆円の埋蔵金については、大部分がいわゆる「改革の配当」です。「改革の配当」は、改革を断行しなければ増えてきません。ですから、問題は改革を継続するか否かです。

 米国発の世界同時不況の深刻化に伴い、政府与党は近く補正予算を編成します。そうした中で、赤字国債を発行してでも補正予算の規模を大きくすべきだとする意見が浮上しています。しかし、世界経済の主要な担い手として、日本が期待されているのは財政再建と経済成長の両立です。それには、埋蔵金を新たに生み出す改革を次々と断行して、「改革の配当」をどんどん増やさなければなりません。

 歩むべき道筋は見えているのですが、その道筋を明らかにした「上げ潮派」は、少なくとも現在、永田町の片隅に追いやられています。そうした中で、無所属の江田憲司代議士も8月25日、ホームページで「1円残らず掘り出せ」との主張を掲げました。江田氏は元通産官僚です。官僚時代、橋本龍太郎政権下で首相秘書官を務めました。2007年、インド洋で海上自衛隊が行った給油が、イラク派遣の米軍の後方支援に当てられてる可能性が強いと指摘し、世界の注目を集めました。江田氏の指摘は、米軍のホームページに基づくものでした。慌てた米軍は、ホームページからその部分を削除してしまいました。その江田氏が埋蔵金論争に加わることにより、与野党の改革派が勢いづくことは間違いありません。###

 

2008年8月19日 (火)

上げ潮派の素顔

 18日の日経新聞朝刊は「核心」というコラムで、土谷英夫氏が以下のような警告を発しています。

 いまの日本経済の苦境は、石油・食糧など1次産品の高騰で、所得が海外に流れ出し、購買力を奪われている点にある。企業も国も悪化した交易条件の回復がカギになる。バラマキに頼り、「政策の選択と集中」を怠った90年代の轍(てつ)を踏んではならない。

 日経新聞のコラムだけに、消費者のことに触れていないのが残念です。「日本は改革の手を緩めている」と酷評されるようになったのは、2006年発足の安倍政権からでした。政権発足から3か月にして、郵政造反組の議員の復党を次々と認め始めました。国内だけでなく世界中が驚きました。わずかに、中川秀直幹事長が彼らに対し、郵政改革に2度と反対しないとした誓約書に署名させました。しかし、自民党内からは、「かっての同僚に対し、非礼ではないか」といった批判が相次ぎました。

 安倍首相が郵政造反組を復党させたのは、2007年7月に迫った参院選に勝利するためでした。「旧特定郵便局長関係組織の支援を受けたい」というのが、安倍首相の思惑でした。しかし、郵政造反組を復党させてから、内閣支持率が急降下しまた。20ポイント前後の急落でした。選挙に勝とうと思って打った手が、これほど見事に外れた例は記憶にありません。参院選は公示前から勝敗は明らかでした。自民党の大敗、民主党の大勝です。その結果、参院は民主党を中心とした野党勢力が過半数を制しました。

 民主党の勝因は①米価の低迷に悩む農家に対し所得補償をすること、②地域間格差・所得格差の是正、③年金問題に象徴される霞が関の不祥事でした。自民党は2007年の福田政権発足後、次の衆院選対策として民主党と同じ格差是正対策に重点を置く方針です。 

 小泉・竹中改革については、国内国外を問わず企業経営者やエコノミストの間では概して好評です。しかし、自民党内では歳月を経るにつれ、評判は悪くなるばかりです。そして、8月1日に行われた内閣改造と党役員人事の刷新では、改革を目指す「上げ潮派」は100%近く締め出されました。わずかに中川秀直氏が自民党の国家戦略本部長代行に起用されたに過ぎません。その後中川氏は「暫くはじっと孤独に耐える」と、心境を語っています。その一方、「国家戦略本部に改革派の優れた人材を結集する」との決意も明らかにしています。

 中川氏は2005年小泉政権下で、自民党の政調会長に就任しました。そのとき、改革の立案を官僚に委ねたのでは大きな改革はできないとして、シンクタンクをつくりました。そこには、優秀な学者だけでなくビジネスマンなども参加しています。中川氏はシンクタンクでの討議を通じて、実に多くのことを学びました。それらをもとに書き上げたのが、2006年10月に出版した「上げ潮の時代」です。もう1冊は2008年5月出版の「官僚国家の崩壊」です。「上げ潮の時代」は成熟した国家である日本にとって、経済成長を実現するには何が必要かを具体的に説いています。中川氏は自民党内では、以前から有数の政策通として知られていました。しかし、「上げ潮の時代」の出版によって、政治や経済を専攻する学者の間でも評価を高めました。「官僚国家の崩壊」は、政治・行政改革の実践書です。中川氏が2冊の著書を通じて強調しているのは、「小さな政府の実現」です。高橋洋一氏は、中川氏の政策ブレーンの1人です。2008年3月に、「さらば財務省」という著書を出版しました。その著書の「安倍総理辞任の真相」と題した序章の中で、高橋氏は以下のように記しています。

 小さな政府と大きな政府という視点からみれば、小泉改革も安倍内閣も小さな政府に向けての取り組みだった。先陣を切った小泉政権が実施した郵政民営化や道路公団民営化、政府系金融機関の改革などは、いってみれば大きな政府軍の外堀を埋める改革だった。小泉路線を継承した安倍政権は、これを1歩進めて本丸に切り込んだ。これが公務員制度改革だった。しかし、その代償は大きく、霞が関と官僚政治家に足もとをすくわれ、刀折れ、矢尽きた。討ち死に覚悟で敢然と本丸に切り込んだ安倍政権は、もっと評価されていいのではないかと思っている。

 2008年は景気の後退によって、補正予算の必要性が出てきました。景気後退が深刻化するにつれ、予算の規模・対策の内容・財源に国民の関心が集まっています。財源は、いわゆる霞が関埋蔵金を含む「改革の配当」をあてるべきです。赤字国債の発行は断じてなりません。「改革の配当」というのは、高橋氏によりますと、郵政改革などによって政府が手に入れた株式などのことです。中川・高橋氏らは向こう3年間に、与野党がじっくり協議して、社会保障制度の抜本的改革を実現させるべきだと提言しています。その間、今の社会保障制度を維持するのに、新たな財源が必要です。これについて、高橋氏は「文芸春秋9月号」の中で、「改革の配当」をあてるよう強調います。そして、具体的には郵政会社の株式の売却によって5兆円、日本政策投資銀行と商工中金の民営化によって、8.2兆円の株式売却益が見込めると計算しています。

 政治を注意深く観察する場合、一切の色眼鏡を抜きにしなければなりません。色眼鏡というのは主義主張や好き嫌いのことです。政治路線、イデオロギーもそうです。色眼鏡を外し、中立的な立場で観察しますと、小泉氏・竹中氏・中川氏、それに高橋氏らが目指した改革は、国内ではバカに評価が低いのに気づきます。高橋氏によりますと、2006年度には20兆円余の埋蔵金を吐き出させました。そして、小泉首相の指示で、全額を国債の償還にあてたのです。内訳は「財政融資資金特別会計」が12兆円、外国為替資金特別会計」から8兆円などです。2007年度も9.8兆円の埋蔵金が出てきました。しかし、財務省は国債の償還にあてたのは、たった3兆円にすぎません。残りの6.8兆円は、日本銀行と財政融資資金特別会計が保有する国債の買い入れに、3.4兆円ずつ使う計画とのです。これについて、高橋は「国債償還したことにならない。というのは、日銀も広い意味では政府の中にある。つまり、財務省の隠しポケットにあった埋蔵金を、同じ服についている日銀というポケットと、もうひとつの財務省のポケットに移し変えたに過ぎない」と指摘しています。そして、2008年度以降に使える埋蔵金のリストを掲載し、その合計は何と50兆円にのぼると計算しています。

 霞が関埋蔵金について、津島雄二氏、伊吹文明氏、与謝野馨氏、古賀誠氏などの有力政治家は、当初、こぞって否定的でした。しかし、「改革の配当」がこれだけ膨らんできますと、「上潮派」に対し、白旗を掲げるのが普通です。しかし、霞が関や永田町は違います。「上げ潮派」を嫉妬し白眼視しています。また誹謗中傷もしています。何と了見が狭いことか、まるで田舎の村社会と同じです。

 2007年から2008年にかけて、霞が関の劣化が改めてクローズアップされました。「5000万件にのぼる消えた年金」、「官製談合」、「巨額な税金の無駄遣い」などです。その先頭に立ったのは、民主党衆院議員の長妻昭氏でした。審議を尽くせなかった様々な問題について、長妻氏は政府に対し、質問趣意書を繰り返し提出しました。その結果、霞が関のいい加減な事務処理の数々が明らかになりました。官僚出身の有力政治家たちも、唖然とせざるを得ませんでした。長妻議員の精力的な国会審議や調査活動には、国民のほとんどが敬意を表し、感謝しています。しかし、霞が関からは白眼視されています。 

 2006年、不祥事が続発したNHKに対し、出直しを求める世論が高まりました。そうした中で、北朝鮮の拉致問題をめぐるラジオの国際放送のあり方に対し、総務大臣が敢えて命令を出す必要があるどうかが問題となりました。自民党内でも「命令は出すべきでない」」というのが大勢でした。しかし、菅義偉(すがよしひで)総務大臣は終始、「この際、NHKに対し、命令を出すほうが分かりやすい」として譲りませんでした。そして、その年の11月、とうとう命令を出しました。命令の内容は「拉致問題に留意すべきである」というものでした。ニュースを含む番組の内容について、NHKは編集の自由を貫く代わりに、偏った内容の番組を放送してはならないことが、放送法によって義務づけられています。但し、ラジオの国際放送に限り、番組の内容に干渉しない範囲で、総務大臣に命令を出せるようになっていました。その後、国会では放送法の改正が行われ、「命令」を「要請」に改めました。菅義偉氏は1948年生まれで秋田県の出身です。高校卒業後、集団就職で上京しました。そして、法政大学を卒業後、横浜市議を経て、自民党の衆院議員となりました。神奈川2区選出です。いわゆる2世・3世議員が多い中で、立志伝中の人物です。しかし、この種の人物が陥りやすいのは、要職に就きますと強権を振り回すことです。郵政公社の生田政治総裁を、突如解任したのも菅大臣でした。民主義主義を実現し定着させるのに、人類が払ってきた犠牲は計り知れません。菅氏は民主主義のイロハを、改めて学ぶ必要のある政治家の1人です。 

 2008年秋の補正予算をきっかけに、与野党のバラマキ合戦が起きかねません。そうなりますと、日本は諸外国からますます見放されます。国や自治体の借金が、ますます膨らむからです。経済のグローバル化によって、ヒト、モノ、カネ、情報の動きが、地球規模に拡大しているからです。それだけに、経済の舵取りはますます難しくなってきています。視野が狭く見識の無いカチカチ頭の人物には、国の経営も企業の経営も任せられません。このままでは、日本はずるずると落ち込んでしまいます。日本を上昇気流に乗せるには、中川氏が指摘しているように、「資源高に耐えられる新しい経済構造の改革」がどうしても必要です。

 民主党の小沢一郎代表は、かって政敵から「悪魔だ」とか、「亡国のポリティシャン」とかの批判を浴びました。口癖の「原理・原則」を振り回して、周囲の人々困惑させ、政治を混乱させてきたからです。2007年、小沢氏の資金管理団体が東京都内に、合わせて10億円を超えるマンションや不動産を、保有していることが報道されました。「政治献金で購入したのではないか」という疑惑に対し、小沢氏は「後日、記者会見して、不動産保有のいきさつを含め、全資料を公表したい」と語りました。そして、後日の記者会見では、約束通り資料を公表したました。ところが、コピーを一切許さなかったうえ、会見終了後、資料を回収しました。小沢氏は記者会見の中で、「法律上何ら問題がない」と強調ました。しかし、資料のコピーも許さないという会見は、滅多にありません。したがって、翌日の新聞を読んで理解できない部分が多く、今も解せないでいます。比較的最近のことですが、「小沢氏の資金管理団体は、それらの不動産を処分した」との記事が載っていました。ますますもって不可解です。

 現在、政局の焦点の一つは、いつ解散総選挙が行われるかです。そうした中で、小沢氏が一貫して強調してるのは「次の衆院選挙で政権が交代させなければ、日本の未来はありません!」の一点張りです。国民にとって余りにもリスクが大き過ぎます。福田内閣の支持率低下で、政権奪取が現実味を帯びてきているにもかかわらず、政権構想の中身は依然として空洞のままだだからです。民主党は9月に代表選挙を行います。党内では小沢氏の無投票当選の動きが加速しているとされています。しかし、剛腕といわれる小沢氏が、もしも無投票で党首に選ばれた場合、独裁色を一段と強めることを懸念しています。

 秀才たちで成り立っている組織は、大事なときに取り返しのつかない大きな間違いをします。東条英機に象徴される陸軍参謀本部がそうでした。ご存じのように、やったことといえば、いわゆる15年戦争を起こし、国家を破滅させたのです。財務省も主計局を中心に秀才ぞろいです。しかし、バブル崩壊後の金融危機に対し、有効な対策を打てませんでした。陸軍参謀本部と財務省に共通しいるのは、「自分たちの考えに、絶対間違いはない」という思い上がりです。司馬遼太郎氏によりますと、特に陸軍参謀本部が常軌を逸していたのは、各国に駐在している情報将校が命がけで入手した秘密情報について、自分たちの考えと異なると、「あのバカ将校からの情報か」と言って、一切、取り合わなかったことです。財務省の前身の大蔵省も、似たようなものでした。山一證券や北海道拓殖銀行などの金融機関の破産が相次いだ1990年代、大蔵省はさっぱっり有効な対策が打ち出せず、世の中の批判を浴びました。そうした中で、幹部の接待漬けが明らかになり、次々と辞任に追い込まれました。それがきっかけで、大蔵省改革が行われ、財務省と金融庁に分割されました。

 2002年に竹中平蔵氏が金融担当大臣を兼務して、不況の根源であった金融機関の不良債権の処理に乗り出しました。巨額の公的資金を金融機関に投入して、ようやく金融危機を乗り越えました。竹中氏が2002年に金融担当大臣を兼務するまでの1年5か月の間、不良債権処理のすすめ方をめぐり、大蔵省出身の柳沢伯夫氏との間で激しい論争が展開されました。当時、柳沢氏は金融再生委員長や初代金融担当大臣を務めていました。そして、「日本の金融機関は巨額の公的資金を必要とするほどヤワではない」と主張しました。これに対して竹中氏は、「政府は不良債権の処理を急ぐべきで、世界初の同時不を発生させてはならな」と譲りませんでした。世界的にも有名になった、「ハードランディング」か「ソフトランディング」の論争です。それにしても、竹中氏と柳沢氏に1年5か月も論争させたのは小泉首相です。難しい問題だったとはいえ、「竹中大臣に全て任す」という結論を出すのに時間がかかりすぎました。小泉首相も「トゥー・レイツ」の人でした。しかし、海外では「小泉と竹中が、やっと日本を救ってくれた」と、意外なほど好評でした。

 それより前の金融危機真っ只中の頃、大蔵省の銀行局長は西村吉正氏でした。1994年に銀行局長に就任し、2年後に退官しました。そして、1999年10月、「金融行政の敗因」という著書を、文芸春秋社から出版しました。西村氏は著書の「あとがき」で、以下のように述べています。

 バブルの発生・崩壊・金融危機を振り返った時、事実としては分かったように思っても、いまひとつ腑に落ちないところがある。私自身、当事者としてその渦中にあったし、今は大学でそのような出来事を若い人達に伝える立場にある。府に落ちないでは済まない。本書では、そこのところを少しでも解明できないか、自分なりに努力してみた。結局、こういうことではなかったか。80年代から90年代にかけて、「(カネ、モノ余りの)豊かすぎる時代」と「人の減る時代」と「国境のない時代」が1度にやってきた。社会の変化はいつどこでもある。一つ一つなら何とかこなしていけるが、三つ一度にやってきたのは日本だけ。しかも長い間、日本の経済構造の中心だった金融にプレッシャーが集中して壊れてしまった。金融行政は、このような事態を先取りし、十分な対応策を講ずることができなかった。

 本文もそうでしたが、「あとがき」も正直に告白しています。しかし、東大法学部出身の官僚が、現役時代、こんな弱音を吐いたら大問題です。西村氏の国会答弁を何回もテレビで見ましたが、「まだ万策は尽きていません」という態度でした。

 最後に上潮派の著書を、さらに2冊ご紹介いたします。1冊は「官僚との死闘700日(長谷川幸洋著)」です。もう1冊は「お国の経済(高橋洋一著)」です。上記の文中で紹介している3冊を含むこれらの著書は、政治家・官僚・ジャーナリストがそれぞれの立場から、一連の改革の実情を記録し、解説したものです。ここでいう官僚は西村氏ではなくて、高橋氏のことです。マスコミ報道では知り得なかったことが多々ありわくわくしました。 実は一部の友人に対し、病気による全身の衰えを理由に、「もう本は読めない」と連絡してきました。しかし、今月初旬から読書を再開しました。上潮派の改革に向けての取り組みを詳しく知りたかったからです。連絡しないで申し訳ありませんでした。この数日来、天国への旅立ちが迫っていることを、日に日に強く感じています 。 しかし、みなさんは、健康管理を怠らず、いつまでも長生きしてください。これまでのご厚誼に対し、心から感謝申し上げます。###

2008年8月16日 (土)

ロシアの本質

 私事ですが、筋ジストロフィーに似た「神経痛性筋萎縮症」という難病にかかって7年になります。筋肉が力を失って豆腐のようにやわらかくなり、やがて萎縮してきます。現在、顔面・首・肩甲骨の筋肉の症状が最もひどく常に痛みます。キーボードを操作すると、首筋・肩・背筋が一段と痛み閉口しています。それだけに、本日のブログが最後となりそうです。

 ロシアが隣国グルジアを戦車で制圧しようとしています。南オセチア自治州とアブハジア自治共和国における、民族紛争を口実にした侵略行為です。グルジアのサアカシビリ大統領はNATOへの加盟を強く希望してきました。ロシアにとって、それが許しがたいのです。

 司馬遼太郎氏の著作に、「ロシアについて」という名著があります。司馬遼太郎氏は「坂の上の雲」と「菜の花の沖」の2つの大著を執筆するに際し、7年半の歳月をかけ昔のロシアとソ連について徹底した調査をしました。その結果をまとめたのが「ロシアについて」です。

「ロシアについて」によりますと、ロシアの特異性は①病的な猜疑心、②潜在的な征服欲、③火気(兵器)への異常な信仰、④無制限な独裁の4つだと指摘しています。これについて、司馬遼太郎氏は、ロシア国家が成立する15~16世紀までの間、スラヴ民族はモンゴルを中心とした東アジアの民族にる暴虐支配に幾たびも遭ったからだと分析しています。

 1991年のソ連崩壊後、ロシアを含む15の共和国が独立しました。このうちバルト3国を除く12か国が、その後、独立国家共同体(CIS)という組織をつくります。グルジアもCISに加盟していました。しかしこんどのロシア侵攻に抗議して、グルジア議会はCISからの脱退を決議したと伝えられています。

 グルジア情勢が今後どう展開するか、全く予断を許しません。司馬遼太郎氏が明らかにしたロシアの特異性に加え、ロシアの事実上の最高権力者であるプーチン首相の政治手法からみて、ロシア軍が簡単にグルジアから撤退するとは考えられません。グルジアに続いてウクライナにも、ロシアはこれまで以上に介入してくることが予想されます。といいますのは、ご承知にようにウクライナの政権も西欧寄りだからです。

 欧米諸国はロシアの不当な侵攻・侵略に対し、今のところ、有効な手立てを講じられないでいます。米国はイラクに不当な戦争を仕掛け、ヨーロッパ諸国はエネルギーをロシアに大きく依存しているからです。そうはいっても、ロシアの蛮行をこのまま認めれば、米国もEU諸国も国際的に存在意義を問われます。###

2008年8月10日 (日)

天才・高橋洋一氏

 高橋洋一氏は、小泉・安倍政権下で改革の知恵袋でした。また、霞が関に巨額な埋蔵金のあることを白日の下にさらし、「霞が関埋蔵金男」として知られるています。しかし、福田政権の誕生とともに首相官邸を追われ、古巣の財務省への復帰も諦めざるを得ませんでした。「霞が関を敵にまわした男」とか「官僚すべてを敵にした男」とも言われています。高橋氏の「さらば財務省」・「お国の経済」と、長谷川幸洋氏の「官僚との死闘700日」を読みますと、高橋氏を「天才」と呼ばずして何と呼ぶべきか迷います。

 高橋氏は「お国の経済」という著書の中で、1999年にノーベル賞を受賞した景気対策についての理論を分かりやすく紹介しています。それは「マンデル・フレミング理論」と呼ばれ、為替が変動相場制の下で有効な景気対策は金融政策だというのです。財政政策は景気対策としては余り効かず、外国を利するだけだというのです。その概要を高橋氏の著書の中から引用します。

 景気回復のための財政政策を実施する場合、国債を発行して公共投資を拡大します。国債を発行して民間から資金を集めますと金利が高くなります。金利が高くなると為替は円高になります。円高になると輸出が減少します。その結果、公共投資の拡大が輸出の減少に相殺され、景気の回復には余り効きません。そのうえ、公共投資の拡大は輸入の増大を招き、得をするのは日本への輸出が増える外国だどいうのです。一方、金融政策によって景気を回復させるには、金利を引き下げます。金利を下げると為替は円安になります。円安になると輸出が増加します。輸出が増加すると設備投資が活発になり、景気が回復に向かうというわけです。

 このように述べたうえで、高橋氏はこれまでの金融政策を厳しく批判しています。日本では「インフレ・ターゲット」をめぐって論争が活発です。しかし、高橋氏は「インフレ・ターゲット」というのは、「インフレ・コントロール・ターゲット」の略で、世界の主な中央銀行の中でそれを掲げないのは日銀くらいだと指摘しています。そして、最近までデフレ下にあった日本の場合、1~3%くらいの「インフレ・ターゲット」を設定して資金を大量に市場に供給し、デフレ脱却のための対策を実施すべきであったと述べています。

 高橋氏はいわゆる「上げ潮派」について、「真の上げ潮派は日本には3人しかいない」と冗談を言っています。3人というのは、自民党の中川秀直氏、竹中平蔵氏、それに自分だというのです。そのうえで、上げ潮派の主張とは反対方向に向かっている今の政治と行政の現状について、「必ず日本をダメにする」と警告しています。ご存じのように、上げ潮派の主張は①経済成長政策の推進、②500兆円といわれる膨大な政府資産の売却、③徹底した歳出カット、④諸制度の大胆な改革を実施したうえで、それでもダメなら増税に踏み切ろうというのだと解説しています。

 今度の内閣改造・自民党役員人事の一新で、中川氏は自民党の国家戦略本部の本部長代行に就任しました。中川氏はホームページで、「国家戦略本部には改革派の有能な人材を結集する」と意気込んでいます。天才・高橋洋一氏は中川氏のブレーンだけに、国家戦略本部が今後、どのような動きを見せるか極めて注目されます。###

2008年8月 8日 (金)

霞が関中枢の巻き返し

 借金漬けの財政をどうやって建て直すかが、日本にとって極めて重要な課題であることは今や小学生でさえ知っています。この財政改革をめぐり、自民党内では与謝野馨氏・谷垣禎一氏らを中心とする「財政改革派」と、中川秀直氏らを中心とする「上げ潮派」との間で路線論争が続いています。

 ご承知のように、財政改革派は財政を健全化させるには、消費税の大幅増税は欠かせないと主張しています。一方、上げ潮派は消費税の増税よりも、まず霞が関による税金の無駄遣いの徹底排除を優先させるべきだとしています。両派は一時、霞が関にいわゆる埋蔵金が有るか無いかをめぐって、激しい論争を繰り広げました。上げ潮派が「埋蔵金はある」と言えば、財政改革派は「埋蔵金なんかあるはずがない」と主張しました。しかし、改革派天才官僚だった高橋洋一氏の綿密な分析によって、霞が関に巨額な埋蔵金があることが明らかになりました。

 先の内閣改造と自民党役員人事の一新によって、上げ潮派はほぼ一掃されたのに対し、財政改革派は与謝野馨氏をはじめとして主要な人物がことごとく重用されました。しかし、上げ潮派の重鎮の中川秀直氏は自らが自民党の国家戦略本部の本部長代行に起用されたことに関連して、ホームページの「トゥデイズアイ」の中で、注目すべき解説をしています。それは、財政改革派や郵政民営化反対派を重用することによって、福田首相は彼らを改革路線へ転向させることを意図していると説明しています。そして、自民党の国家戦略本部に人材を結集して、福田首相の改革路線継承の考えを後押しすると宣言しています。

 財政改革派も上げ潮派も、財政再建の道筋をつけたいという目標については一致しています。問題は財政再建をするための手順です。財政改革派は上げ潮派の言う増税なしの財政再建は幻想に過ぎないと決めつけています。これに対して、上げ潮派は増税をすれば、霞が関による税金の無駄遣い排除の手綱が緩んでしまい、財政再建が中途半端に終わってしまうと警戒しています。

 確かに増税によって税収が増えれば、財政規律が緩みがちになることは、これまでの歴史が証明しています。しかし、現在の深刻な財政上状態や景気の後退を考えますと、衆院の解散総選挙の有無にかかわらず、増税は景気が回復するまで見送らざるを得ません。そして、霞が関による税金の無駄遣いの徹底排除につながる諸制度の大胆な改革を加速させねばなりません。また、有効な景気回復策を早急に実施しなければなりません。

 中川秀直氏、高橋洋一氏、長谷川幸洋氏など改革派諸氏の著作を読みますと、財務省・主計局を中心とする霞が関の中枢は、与謝野馨氏らを押し立てて改革の波が押し寄せるのを必死になって食い止めようとしているとのことです。そして、改革派の天才官僚であった高橋洋一氏を、とうの昔に霞が関から追い出すことに成功しました。中川秀直氏の改造人事の解説とは裏腹に、霞が関中枢による猛烈な巻き返しが、うなりを挙げて迫ってきているような気がしてなりません。###

2008年7月30日 (水)

観光庁の設置

 7月30日の日経新聞朝刊が「北大観光学高等研究センター」の話として、各国の観光行政機関の実情を紹介しています。そして、一覧表にしてタイ、オーストリア、イギリス、香港、韓国、日本の観光行政機関の要員、海外事務所、国からの交付金の比較を行っています。日本の観光行政機関は、現在、独立行政法人の「国際観光振興機構」です。国際観光振興機構」は上記の4か国と香港に比べて、要員も、海外事務所も、国からの交付金も最低です。例えばイギリスとの比較では、要員は日本が137人であるのに対し、イギリスは476人です。海外事務所も日本が13に過ぎないのに対し、イギリスは35です。さらに、国からの交付金も日本が21億円にとどまっているのに対し、イギリスは155億円です。

 北大観光学高等研究センターによりますと、イギリスでは1997年に誕生した労働党のブレア政権が、「クール・ブリタニア(格好いい英国)」政策を積極的に推し進めました。その結果、美術、デザイン、音楽、映画、建築、ゲーム開発などの産業が発展しました。そして、外人観光客の増加をもたらしました。イギリス政府観光局が、潤沢な資金と豊富な人材を活用して、観光客の増加につながる産業やイベントの育成に力を注いだからと、北大観光学高等研究センターでは分析しています。

 日本の場合、2008年10月に国土交通省の外局として「観光庁」が設置される予定です。そして、2020年には外国からの観光客を、今の700万人台から2000万人に増やしたいとしています。観光庁の組織の規模や予算については、まだ大枠すらは決まっていませんが、幅広い分野から豊かな才能を有する人材を揃える必要があります。そして、全国各地に、外国人が訪れたいと思うような文化を育まねばなりません。それには、生田正治氏のご指摘のように美しい景観をつくることに加えて、優しい心を培うことがどうしても欠かせません。優しい心は21世紀になっても、人々の間から失われ続けています。それだけに、日本の観光文化の基本に、「心の優しさ」を据えたいものです。###

2008年7月29日 (火)

日本の立脚点

 7月28日の日経新聞に、商船三井の相談役で郵政公社の総裁を務められた生田正治氏が、インタビューに応じて示唆に富んだ提言をされています。暫くの間、生田氏の話をご紹介します。

 日本を「観光立国」するための国民運動を、1日も早く展開すべきです。モノづくりは現在でも日本経済の基盤ではありますが、「工業立国」、「貿易立国」だけでは限界があります。2006年時点で日本への外国人旅行客は733万人で世界30位です。フランスの十分の一以下、香港の半分にも満たない水準です。もう一度開国するという意気込みでやれば、フランスの半分くらいには伸ばせると思います。

 日本の取り組みが遅れたのは、縦割り行政の弊害が大きいと思います。私が海運業で直面した港湾行政と同じで、観光についても国土交通省や外務省、経済産業省、文部科学省、警察などが縄張り意識を持ち、さらに中央と地方の2重行政になっています。このためバラバラに「点」の動きはあっても、連携した「面」の発想がないから総合力が発揮できないのです。このままでは日本の港湾がアジアの拠点機能を失ったのと同じ道を歩みかねません。

 さらに、生田氏は観光立国をめざす国レベルの具体策として、羽田空港の国際航空化を挙げています。そして、そのためには羽田空港の大規模な拡張が不可欠だとしています。ただ、羽田空港を大規模に拡張するには、横浜港を東京湾の中枢港として大型・中型船を収容する必要があると指摘しています。また、成田空港については、航空貨物の拠点とする一方、電子やバイオなど高度技術産業を周辺に誘致することを提言しています。一方、地方レベルの具体策としては、美しい景観づくりが大切だと強調しています。そして、旅館や温泉といった発想ではなくて、訪れる旅行者との間で文化の交流を深めるという思想が大切だと述べています。

 生田氏が指摘されている総合力の欠如は各省庁にも問題がありますが、政治にはもっともっと問題があります。政治が各省庁に依存していて、総合力を発揮させるようなリーダーシップをとれないでいるのです。現在、厚生労働省中心に行政の劣化が問題視されていますが、政治家は閣僚を含め、何故か自分たちには責任がないようなポーズをとり続けています。とんでもない話です。日本が劣化してきている大半の責任は、大きな権限を有する政治家にあります。政治家に責任があるということは、国民にも責任があるということです。主権者である国民には、無責任で能力のない政治家を淘汰する義務と責任があります。

さらに、観光というと温泉や旅館といった発想でなく、旅行者との間で文化交流をするという指摘も重要です。日本の場合、地方都市にしろ、農漁村にしろ、画一的になったとはいうものの、まだまだ個性豊かな文化が存在しています。しかし、それらの個性豊かな文化を外国人にも体験してもらう用意は、全体的に整っていません。また、欧米に地方都市や田舎町に比べて景観が美しくありません。景観には全く無頓着で、屋根の色も、家の向きもバラバラです。さらに農漁村では、作業区域と居住区域が画然としておらず、ゴチャゴチャしています。とても外国人観光客を迎え入れる環境にはありません。こうした問題を地域全体で一つ一つ改善していけば、温泉地でなくても外国人はやってきます。また、国内の観光客もやってくるはずです。### 

2008年7月27日 (日)

4頭立ての馬車が必要

 日本の江戸時代を概観しますと、緊縮財政を実施した時代は、世の中全体が沈みがちでした。そして、庶民は毎日の生活のやり繰りに苦労し続けました。一方、放漫財政を実施した時代は、世の中全体に活気が出てきました。そして、庶民の暮らしも比較的楽になり、芝居見物や旅行が盛んになりました。だからといって、現在、いわゆるバラマキ政策を実施したのでは、政府の借金はたちまちのうちに1000兆円を超えてしまいます。1000兆円という借金は、年間の税収の20倍以上です。

 経済がグローバル化して、人、モノ、カネ、情報が自由に世界中を行き交うようになっているだけに、日本がバラマキ政策によって借金をさらに増やすとあっては、世界中から信用されなくなってしまいます。それだけに、これ以上借金を増やす政策を極力抑えて、借金まみれの財政を建て直す道筋をつけねばなりません。それには、①公務員制度の改革を含む霞ヶ関による無駄遣いの一掃、②国有財産の売却、③経済成長政策の推進、④それに増税の4頭立ての馬車を走らせなければなりません。

 しかし、日経新聞の朝刊が27日に伝えるところでは、自民党の税制調査会は早くも消費税の増税を打ち出すのを諦めました。また、所得税の累進税率の引き上げも見送る意向のようです。衆議院選挙が取り沙汰されているだけに、増税を打ち出すと有権者の支持を得にくいという議員心理によるものです。

 国や自治体の財政が破綻状態にあることについて、国会議員も経済界も霞ヶ関も国民も危機意識が足りません。とにかく、財政を健全化させる方向にもっていきませんと、年金改革、医療保険改革、介護保険改革も不可能です。また、格差是正対策も推進できません。それだけに歯を食いしばって、いわゆる4頭立ての馬車を同時並行的に走らせなければなりません。日本人はもっともっと忍耐強くなる必要があります。そして、新しい国造りの展望を開かねばなりません。###

2008年7月26日 (土)

サブプライムローンと不正取引

 アメリカのサブプライムローンを含んだ金融商品の暴落による金融市場の混乱は、1年経って益々深刻化の様相を呈しています。サブプライムローンというのは、信用力の低い個人向け住宅融資のことです。アメリカの金融機関は信用力の低い個人向け住宅融資についても、住宅を担保に次々と証券化しました。そして、証券化したそれらの金融商品をさらに細かく分割したうえ、他の金融商品に混ぜ合わせて投資家や銀行との間で売買を繰り返しました。

 アメリカの住宅バブルの崩壊でサブプライムローンの返済率が悪化しますと、サブプライムローンの混じった金融商品は暴落を始めました。そして、世界的な株安をもたらしました。その結果、株式市場から離れた資金は次々と商品市場に流れ込みました。そして、原油・穀物・鉱物資源の高騰を招くなど、実体経済にも多大な悪影響を及ぼしています。不況下の物価高がそうです。

 昨年の7月以降、多くの住宅金融機関は信用力の低い個人とローン契約を結ぶ際、数年後に利息が大幅に跳ね上がるのを隠したり、契約さえ結べば支払いのほうは何とかなるなどと、詐欺まがいの勧誘をしていたことが次々と明らかになりました。住宅価格が年々値上がりしていた時代は、こうした詐欺まがいの勧誘は表面化しませんでした。しかし、バブルがはじけて住宅価格が暴落してきますと、信用力の低い個人はローンを払えなくなりました。そして、ローンで購入した住宅を差し押さえられました。その結果、詐欺まがいの勧誘がどっと表面化しました。

 そうした中で、7月26日の日経新聞朝刊は、アメリカの金融当局が市場の規制強化に乗り出したことを伝えています。また、司法当局による金融機関の不正摘発も相次いでいると報道しています。このうち市場の規制強化で最も大きなものは、株の空売りの規制拡大です。アメリカの金融当局が考えている株の空売り規制は、現物株の手当てを全くせずに空売りをする取り引きです。株価の値下がりを防ぐのが狙いです。

 また不正摘発は、住宅ローン詐欺で144件を立件し、関係者406人を訴追しました。また、スイスの金融最大手のUBSを金融商品の虚偽説容疑で、証券詐欺で大手証券会社・ベアー・スターンズの元幹部2人をそれぞれ訴追しています。さらに、原油先物市場の相場操縦の疑いで、オランダの投資ファンドを起訴したほか、金融商品をめぐる虚偽説明の疑いでアメリカ大手銀行の「ワコビア」を捜査している模様です。

 サブプライムローンをめぐる不正の摘発については、7月から本格化しています。内偵捜査に、ほぼ1年を費やしたことになります。市場は自由度が高いほうが、使い勝手がよいに決まっています。しかし、法律に触れる不正な取り引きについては、断固として取り締まりませんと、市場の信頼性が損なわれてしまいます。日本の市場も例外ではありません。

 

地方分権化

 国の出先機関を廃止して、職員や予算を都道府県などに移譲することが、日本にとって重要な課題の一つになっています。行政の2重・3重構造を改め、税金の無駄遣いを無くすことにつながるからです。また霞ヶ関の権限が縮小するため、行政運営の効率化も期待できるからです。知事などの自治体の首長が、いちいち霞ヶ関に出向かなくても済むようになります。

 しかし、霞ヶ関の権限を縮小して地方自治体の権限を拡大することについては、危ぶむ向きが少なくありません。これまで霞ヶ関に依存して行政をすすめてきただけに、拡大した権限を正しく行使できる人材が揃っているだろうか、汚職は増えないだろうかなどの懸念です。国の出先機関の職員が都道府県に移ってきても、そうした懸念は解消されません。 

 ですから、地方分権の拡大に備えて、地方自治体は職員の能力をアップさせる研修制度の充実にもっともっと努めねばなりません。また、議会が行政のチェック機能を果たすよう、住民も議会・議員の監視を強めねばなりません。

 権限が拡大するということは、それだけ利権が増えるということです。それだけに、汚職防止の対策も、思い切って強化しなければなりません。汚職の被害者は大部分が納税者です。汚職によって税金が無駄に使われるからです。公務員にとって最も大事なことは、公正な行政運営をするということです。議員が我田引水的な要求をしてきても、公正な行政運営に励む信念にいささかの揺るぎもなければ、議員の不当な要求に屈するはずがありません。また、行政の各部門にしても議会にしても、会計のチェック機能も強化しなければなりません。

 大分県教育委員会の教員採用試験や校長・教頭の昇進をめぐる汚職事件は、国民にとって大きな衝撃でした。正しいことを教えなければならない教育の中枢が、極めて長い年月にわたり不正で汚れに汚れ切っていたからです。教員採用試験の成績を改ざんして、合格者を不合格者に、不合格者を合格者にしていたというのですから、とにかくやりきれません。教員採用試験の合否や校長・教頭の昇進を決める要職が、公正さとは無縁の人物よって占められ受け継がれてきたからでした。

 かって新潟県の西山町では、町長が何年も地方競馬に多額の公金をつぎ込んでいたという不祥事が摘発されたことがありました。内部監査、議会、収入役などのチェック機関が全く機能していなかったからでした。大分の事件も、新潟の事件も、地方ではとんでもない不祥事が起り得ることを示しています。かといって、地方分権化を滞らせたのでは日本の明日はありません。###

2008年7月24日 (木)

増税と選挙

 増税をする前に税金の巨額な無駄遣いを一掃すべきだというのは、国民共通の願いです。また、国会議員の大幅な定数削減もそうです。しかし、税金の巨額な無駄遣いの一掃も、国会議員の大幅な定数削減も、これまでのところかけ声だけで実現の道筋は一向に見えていません。 

 自民党の中に「上げ潮派」というグループがあります。先ずは霞ヶ関による税金の巨額な無駄遣いの一掃を最優先させ、それに国有財産の売却と経済成長政策を加味して借金だらけの財政を再建させようという主張です。それでもダメなら、最後の手段として増税に踏み切るという考えです。

 自民党の中には、上げ潮派の考え厳しく批判するグループがあります。このグループは「増税抜きでの財政再建は幻想に過ぎない」と主張しています。これに対して、「上げ潮派」は、「増税をすれば霞ヶ関による無駄遣い一掃の手綱は、どうしても緩んでしまう」と反論しています。

 しかし、公務員制度の改革を含む霞ヶ関による無駄遣いの一掃、国有財産の売却、経済成長政策の推進、それに増税の4頭立ての馬車を走らせませんと、財政再建の道筋は見えてきません。自民党は選挙を控え増税を公約して敗北した経験を3回味わっています。一度目は大平正芳総裁のとき、二度目は竹下登総裁のとき、三度目は橋本龍太郎総裁のときです。それだけに、衆院選挙が取り沙汰されされている中で、財政改革派も消費税の増税を公約することに消極的になり始めています。

 一方、民主党も今のところ、消費税の増税論議には封印をしたまま衆院選挙に臨もうとしています。朝日新聞は24日の社説で、来年度予算の概算要求時期を迎え、福田首相は大幅な歳出カットか増税かについて腹をくくるべきだと論じています。増税は必要だけれども、選挙に負けるのが怖くて公約はできないというのが、日本の政治の偽らざる姿です。しかし、こうした状態を放置すれば日本の借金は益々膨らみ、1000兆円を遥かに超えてしまいます。そうなりますと、子供や孫は私たち以上に借金地獄にもがき苦しむだけでなく、日本発の金融危機も招きかねません。###

2008年7月23日 (水)

年金浪費の源流

 埼玉県の上田清司知事が民主党の代議士だった当時、衆院予算委員会で旧厚生省の部内資料を読み上げました。余りにも驚くべき内容でしたので、後日、上田代議士に対し、「自ら読み上げるよりも、厚生労働大臣か担当局長に読ませるべきであった」という葉書を出しました。上田代議士からはすぐに、「ご指摘の通りでした」という葉書が郵送されてきました。

 当時の上田代議士が衆院予算委員会で読み上げたという資料が、23日の日経新聞朝刊1面の「ザ厚労省」という企画記事の冒頭に紹介されています。その資料というのは1988年に発刊された「厚生年金保険制度回顧録」です。上田代議士はその回顧録に記されていた花沢武夫・元年金課長の言葉を読み上げたのです。

「すぐに考えたのは膨大な資金の運用ですね。何十兆円もあるから一流の銀行だってかなわない。厚生省の連中がOBになったときの勤め口に困らない。年金を払うのは先のことだから、今のうちどんどん使ってしまって構わない。先行き困るのではないかという声もあったけれども、そんなことは問題でない」

 また日経新聞は「厚生年金保険制度回顧録」の発刊とほぼ同じころ、「年金の船」という構想も浮上したと伝えています。集めた年金で豪華客船をつくり、高齢者を格安で世界クルーズに連れていくというものでした。当時の民社党などが提案し、まじめに議論されたとのことです。

 誠に無責任な年金浪費のDNAは、こうして埋め込まれました。花沢発言には年金加入者のことは全く念頭になく、自分たち役人のことしか考えていません。とにかく、とんでもない人物が年金課長だったわけで、呆れ果ててしまいます。ちなみに、花沢氏は故人です。###

2008年7月22日 (火)

民主党へ

 民主党は先の通常国会で、税金などの公費の巨額な無駄遣いを次々と追及し、国民の拍手を浴びました。その一つが道路特別会計の無駄遣いです。借金まみれの財政の下、道路特別会計の一般財源化が大きな課題となっていました。ところが、あっという間に一般財源化が実現してしまいました。民主党の無駄遣いをめぐる厳しい追及に対し、自民党の道路族も、一般財源化に反対する論拠を失ってしまったからです。一般財源化は表向き福田首相の決断でしたが、決断を促す環境づくりをしたのは紛れもなく民主党でした。

 民主党が中心になって一時的に実現したガソリン税などの暫定税率の撤廃も、国民が拍手喝采しました。しかし、与党は衆院の再議決によって、約1か月後に暫定税率の撤廃を反故にしました。自治体を含め予算に穴があくからでした。暫定税率の撤廃は国民の歓心をかうための下心が露骨すぎました。卑しささえ感じさせました。また、財政に対して無責任だけに、政権担当能力を疑わせました。

 民主党がこれまでに公表した諸々の政策について、財源をどうやって確保するかが正確に示されていないという批判があちこちから寄せられています。そうした中で最近、高名な政治学が、「野党なのだから、予算のことは論じなくてもよい」と言って世間を驚かせました。民主党は次の衆院選で勝利し、政権を奪取すると力説しています。そうだとしたら、諸々の政策を実行するのに必要な財源をどうやって確保するかについては、丁寧に明示しなければなりません。そうしませんと、折角の政策が空証文と受取られてしまいます。それだけに、9月に行われる代表選挙が無投票になろうとなるまいと、財源を含め政策にもっともっと磨きをかけねばなりません。###

2008年7月21日 (月)

霞ヶ関の大改革

 霞ヶ関による税金の巨額な無駄遣いについては、国民の誰もが怒りを抑え切れないでいます。税金の巨額な無駄遣いの温床の一つは、各省庁ごとにある出先機関です。これらの出先機関には、自衛隊員を除く32万8000人の国家公務員のうち、21万2000人がいます。そして、仕事の内容のほとんどは、霞ヶ関と重複したり、地方自治体と重複したりしています。行政の2重3重構造の源といわれる所以です。

 これら出先機関について、伊藤忠商事会長の丹羽宇一郎氏が会長を務める政府の地方分権改革推進委員会が、大幅に削減する野心的な勧告案をまとめる方向で作業を進めています。讀賣新聞によりますと、地方分権改革推進委員会の構想では7万4289人の職員と11兆0599億円の予算を都道府県などに移譲したいとのことです。しかし、この構想に対しては、関係の府省庁やそれらの府省庁に寄生しているいわゆる族議員が、激しく抵抗することが必至です。

 一方、民主党も国の出先機関の大幅な削減には、極めて意欲的です。。そして、①国の出先機関を原則全廃すること、②国庫補助金を基本的に全廃し、地方自治体が自由に使えるように一括交付金化すること、③国から都道府県、都道府県から市町村に大幅な権限移譲をすることを柱に、8月中にたたき台を作成する意向です。民主党としては、政府の地方分権改革推進委員会の勧告を上回る大胆な内容の計画をまとめ、次期衆院選のマニフェストに載せる方針です。

 そうなりますと、地方分権改革推進委員会の構想に対し、関係の府省庁も族議員もなりふり構わない抵抗はしにくくなります。民主党がどのような内容の計画をまとめるかにもよりますが、霞ヶ関の大改革が、衆院選で初めてまともな争点として浮上しそうです。###

2008年7月20日 (日)

税制の抜本改革

 税制の抜本改革は、①借金まみれの財政を再建軌道に乗せることと、②所得の再配分によって格差是正に寄与することが、2大眼目でなければなりません。

 借金まみれの財政を再建軌道に乗せるには、消費税の大幅増税が絶対不可欠です。イギリスでは消費税に相当する付加価値税の税率は17.5%です。その代わり、食料品・自家用住宅・家庭用上下水道・書籍・新聞・医療・教育など生活必需品関係は無税です。新聞報道によりますと、消費税の引き上げについて国民の44%がやむを得ないとしています。生活必需品関係を無税にすれば、国民の多くは消費税の大幅増税は致し方ないと思うに違いありません。

 所得税の税率については、米国のレーガン政権が富裕層の税率を大幅に引き下げて以来、世界的に最高税率が引き下げられています。日本もかって75%だった最高税率が、今では40%になっています。多くの経済学者・企業経営者・政治家などが、もっともらしく、「富裕層に重税を課すと、社会の活力が失われる」という主張を展開しています。中には、「富裕層に重税を課すと、彼らは海外に脱出してしまう」と申す有識者もいます。そんな主張は、机上の空論に過ぎません。経済学的にも社会学的にも、立証されていないからです。年収200万円以下の貧困層が1300万人もいるだけに、所得税の最高税率の引き上げは、どうしても必要です。そして、所得を再分配して貧困層の解消に努めなければなりません。相続税も同じように、税率を引き上げるべきです。貧富の差が大きい国は、ろくな国家ではありません。

 

2008年7月19日 (土)

竹島問題

「竹島は日本の領土だ」と中学校の教科書で教えるとしたことに対し、韓国の反日感情が沸騰しています。司馬遼太郎氏によりますと、14世紀初めに朝鮮半島を統一した「李王朝」は、何から何まで儒教で染め上げました。儒教の本家である中国以上に、儒教国家となりました。儒教の特徴は礼節を重んじることです。親・兄弟・親戚を大事にして団結する一方、他の氏族との違いをことさら強調します。時には激しい言葉を使って咆哮します。

 ですから、韓国が竹島問題で日本をののしるのは、ごく当たり前のことです。長い間にわたって民族の心に染みついた儒教文化によるものです。日本も儒教を導入しました。しかし、李王朝時代の朝鮮に比べれば、つまみ食いした程度に過ぎません。それだけに、 李王朝時代の政府関係者は、日本を文化的に劣っている国として厳しく見下しました。そのうえ、日本人の大半は元々、朝鮮半島からの難民です。

 そうした中で、日本は李王朝より一足早く開国して、富国強兵を目指しました。そして、戦前・戦後を通じて世界の主要国の仲間入りを果たしました。それだけに、韓国や北朝鮮が日本を見る目には、優越感と劣等感が入り混じっていて複雑です。そのことを理解しませんと、日本は対応を誤ってしまいます。

竹島問題については、ご存じのように、日本政府は国際司法裁判所に提訴して決着をつけたいとしてます。しかし、韓国政府は国際司法裁判所へ持ち出すことに強く反対しています。といいますのは、竹島は明らかに韓国の領土であって、法的に争う余地は全くないとしているからです。###

2008年7月18日 (金)

自民党へ

 国民のみんなが知っていることですが、借金まみれの財政を建て直す道筋をつけませんと、日本はにっちもさっちも行きません。ガソリン・重油の暴騰に対しても、思い切った手を打てません。年金・医療・介護の改革・改善、1300万人といわれる年収200万円以下の貧困層の救済策もそうです。それには、消費税の増税を中心とした税制の抜本改革がどうしても必要です。

 また、霞ヶ関の大改革にも道筋をつけなければなりません。税金の無駄遣いが余りにも巨額であるうえ、各省庁の行政上の権限が強大過ぎるからです。

 しかし、財政再建のすすめ方について、自民党内では税制の抜本改革に比重を置くべきだとするグループと、それよりも霞ヶ関による税金の無駄遣いの一掃や国有資産の売却に全力を挙げるべきだとするグループとが対立しています。税制の抜本改革も霞ヶ関の大改革も、今の日本にとってはどちらも絶対必要です。それだけに、両グループとも言い争いをしてる場合でないことを自覚すべきです。###

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