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2008年9月19日 (金)

「冷や飯組」の覚悟

「冷や飯組み」というのは、今や自民党「上げ潮派」の代名詞です。内閣改造が行われた8月1日以降、人事の面で冷遇されているからです。それに加えて、中心人物の中川秀直氏は先日、所属する町村派の総会で、最高顧問の森喜朗元首相に事実上一喝されました。森氏の意向に反して、自民党総裁選に小池百合子氏の擁立を目指していたからです。その日、中川氏は「これでは冷や飯も食えないな」とボヤいたとのことです。しかし、その日の夕方以降、気を取り直したようです。さらに、9月15日のホームページでは、次のように述べています。「冷や飯が怖いようでは、改革の覚悟があるとはいえない。鍋料理の楽しみは、締めの鍋料理だ。冷や飯を入れてたべる。具材のエキスを吸い込んで、これがうまい。構造改革路線を支持する覚悟を持った人々は、結束しなければならない」。

 日本の差し迫った課題は、何といっても景気後退に歯止めをかけることです。当初、「財源には建設国債を発行して・・・」なんていう意見が、政府部内にありました。しかし、「今すぐ使える霞が関埋蔵金が6兆円もある」という上げ潮派の指摘に対し、「国債発行」という意見はかき消されようとしています。2008年度に使える埋蔵金は、実のところ6,8兆円にのぼります。それにもかかわらず、「建設国債を・・・」というのは、理屈にあいません。埋蔵金というのは、一連の特別会計の剰余金のことです。それを使わずして、あらたに借金をするというのは、全く説得力がありません。建設国債というのは、公共事業や貸付金などにあてる借金のことです。借金という点では、赤字国債と全く同じです。

 日本のもう一つの重要な課題は、借金だらけの財政を再建軌道に乗せることです。そうしませんと、「年金・医療・介護の抜本的な改革」、「所得格差・地域間格差・官民格差の是正」もなかなかできません。この点についても、冷や飯組の「上げ潮派」は実に尤もなことを主張しています。上げ潮派の理論的支柱である高橋洋一氏によりますと、日本政府は約300兆円金融資産を保有しています。これを順次、証券化して時間をかけて売却し、財政赤字を大幅に圧縮すべきだというのです。ちなみに、300兆円の金融資産の内訳は、特殊法人などへの貸付金が250兆円、特殊法人や独立行政法人への出資金が50兆円です。

 上げ潮派が求めているような形で財政を再建軌道に乗せますと、年間22億円も払っている借金の返済がもっと少なくて済むようになります。その結果、財政に弾力性が増し、時代が求める温暖化防止や新しいエネルギー開発にも対応できます。上げ潮派は常々財政再建の道筋として、①デフレ脱却、②政府資産の圧縮、③歳出削減、④制度改革、⑤増税を提唱してきました。しかし、①~④までは同時並行的に実施しなければなりません。

 一方、与謝野馨氏を中心とする財政改革派は、まず消費税の税率アップを提唱しています。そのうえ、上げ潮派の主張は、「幻想に過ぎない」とか「まやかしだ」と非難しています。上げ潮派に対して、与謝野氏がムキになるのは、これまで何度か辛酸をなめさせられてきたからです。その一つが与謝野氏が会長を務めていた、自民党財政改革研究会の中間報告をめぐる確執です。高橋洋一氏の「さらば財務省」によりますと、問題の中間報告は2007年11月21日に明らかにされました。上げ潮派の主張や民主党の政権構想について、中間報告は「埋蔵金伝説の域を出ていない」と厳しく非難していました。そうした中で、27日、中間報告が自民党総務会で論議されました。中間報告は上げ潮派の面々によって、厳しい批判に晒されました。その結果、中間報告は総務会の了承を得られませんでした。代わりに、上げ潮派がまとめた「財政健全化の基本姿勢」が承認され、自民党の政策として正式採用されました。誇り高い与謝野氏を初めとする「財革研」の関係者にとって、これ以上の屈辱はありませんでした。

 22日に投票が行われる自民党総裁選挙は、麻生太郎氏が圧勝する見通しだと、新聞各紙は伝えています。そうなりますと、上げ潮派は引き続き冷や飯を食わねばなりません。しかし、「緊急経済対策に埋蔵金を有効活用すべきだ」という、上げ潮派の主張は採用されそうです。また、高橋洋一氏は、著書の「さらば財務省」が多くの人々に読まれているうえ、各地の講演に引っ張りだこです。上げ潮派の関係者は一時的に閣僚や党役員に起用されなくても、その考え方が急速に広まりつつあることを誇るべきです。

 霞が関の劣化を印象づける不祥事が、また続発しています。一つは食用に使用してはならないはずの汚染米が、給食に出されたりお菓子の原料として大量に使用されていたことです。問題となった汚染米は、輸入が義務づけられている外国産のコメです。残留農薬のほか、カビの生えていることが明らかになりました。これらの米は農林水産省が保管していただけに、責任を免れることはできません。9月19日、農林水産大臣と事務次官が、早々と引責辞任しました。もう一つの不祥事は、年金支給額の改ざんです。枡添要一厚生労働大臣は、社会保険庁の組織ぐるみの不正の疑いが濃いと述べています。そして、徹底的に調査して膿を出す方針を明らかにしています。霞が関は一段と劣化し病んでいます。###

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